宴の文庫

□第1章〜2〜
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今からほんの数年前・・・シュウが聖騎士になりたての頃
街に大量の妖人が襲来し人々を襲った。
シュウは街の人間を他の聖騎士達と助け、安全な場所に避難させていた。
疲労の溜まる身体に鞭を打ち街を走りまわっていた。

『これで終わりか?』

街の人間が避難していくのを確認していく・・・が見知った姿が見当たらない。
避難場所である騎士団の城の中にいることを願って城中を探しまわった
けれど・・・

『ッ!くそ・・・リア!』

その姿は無く・・・妹の名を呼びながら、城を飛び出した。
他の聖騎士が止めるのも振り切って・・・
たった一人の妹、たった一人の家族が無事である事を祈って
飛び掛ってくる妖人を蹴散らしながら家に向かう。
ただひたすら走った。
家が見えた・・・バァン!と勢い良く扉を開ける。

『リア!・・・ッ!』

シュウの目に映ったのは・・・あまりにも残酷な風景。
血に塗れた妹の肢体、切り裂かれた四肢
そして 醜く笑う一人の妖人

『リアァァァァア!!』

絶叫―シュウの声と同時にその妖人は姿を消した。
今でもハッキリと覚えている、その気色も妖人の姿も・・・そして今
ソイツが目の前で神子の攻撃に絶句している。



「・・・アイツは、俺が消す!」

双剣を力強く握り締め、シュウは妖人のもとへ踏み込んだ・・・が

「・・・!フハハハハハハ、調度いい、お前もこいつ等と同じように俺の糧となれ。」

妖人は地に自らの拳を叩き付けた。
地が唸りを上げ衝撃波がシュウに襲い掛かる。
ドォン!!
轟音とともにシュウは転がる仲間の死体のもとへ勢い良く吹き飛ばされた。
ガシャッ!

「しまっ・・・!」

手から剣が離れる。

「ヒャハハハハハ!これで終わりだ!死ねぇ!」

肘から下を刀身に変え、妖人はシュウにむかって振り下ろした・・・が
ヒュンッ!ズバァァァアー・・・!

「ギッ・・・ギャァァァア!」

悲鳴を上げたのはシュウではなく、妖人。
刃を振り切りつけたのは・・・自分より後ろにいたはずのシリウス。
シリウスはシュウを庇うように立ち、妖人のものであろう血のついた刀を持ち佇む。
斬り付けられ、夥しい量の血が流れ出てくる傷口を押さえながらよろめき
後退していく妖人を見据えながら、シリウスはシュウに向けて、言葉を紡いだ。

「感情に流されるままに剣を振ったところで、自らを傷つけるだけだ。」

「でも!俺は・・・「死ねば何もできなくなる
刃を振るう事も、大切なものの仇を討つことも・・・人は皆 生きる事で全てが成り立つ、死の先にあるのは無だ、何もない、何もできない・・・
ならば生きるために刃を振るえ、シュウ・J・ストーリア。」

シュウの心にズッシリと重く、シリウスの言葉が響く。

「お前の妹だって、お前が仇を討って死ぬことを望みはしないさ。」


キツイ口調なのに、目を合わせていないのに・・・
心に入ってくるその言葉に・・・いつの間にか
零れ落ちていた 一筋の涙・・・



〜続〜
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