宴の文庫

□〜序章〜
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とある町の裏街…薄暗い通路の片隅で声にならない悲痛な叫びが上がった。
壁には紅い血飛沫の跡が舞い、人であった『モノ』の四肢は切り裂かれ、
原型を留めていない…
返り血を浴び、切り裂かれた肢体の屑を見下しながら男はニヤリと笑う。

「ヒッ…ハハハハハハハ!」

狂喜という言葉をそのまま表すように男は笑っていた…
そして次なる『エサ』を求めフラリと立ち上がった。
その時

「随分と、血を浴びたな…」

突如、路地裏に響いた声に男はビクリと反応し、そちらへ目を向ける。
日で影になりハッキリとは見えないが、声の主は
肩の下くらいまで伸びている金髪を風になびかせ、紫暗の瞳で男を見据えていた。

「すでに人ではないのだろ…なぁ、化物。」

ポツリと呟いた人の言葉に男は気味悪い笑みを浮かべた…そして
バキッゴキッバキバキッ
むごい音とともに男の身体は色が変色し、獣のような牙と爪が生え、化物へ…
妖人へと変化した。
『エサ』を見つけたとでも思ったのだろうニヤリと笑い『人』に向かって走り出し、鋭い爪をもった腕を振り下ろした…が

ヒュンッ!
ゴトォォォオン―--…
「ギャァァァア!!」

風を切る音とともに、妖人の腕が切り落とされ、そこから夥しい量の血が噴出すように流れ出る。
悲痛な叫びを上げながら悶え苦しむ妖人。
『人』は刀に付着した血を振り払い腰の鞘に収めると、短銃を取り出し、もがいている妖人の額へ向けた。

「ヒッ!…タ、助ケ…。」

紫暗の瞳が妖人を射抜く。

「あれだけ、人の命を弄んどいて、今更 命乞いか?…くだらんな。」

ガウン!

放たれた銃弾は妖人の額を貫き、跡形もなく消し去った。

「闇なるモノには制裁を…」

影が薄れ、日の光に照らし出される『人』の姿…手の甲に描かれたタトゥが、その者を女、そして神子である事を物語っていた。

        〈クロス〉
神子の名はシリウス・C・グレイブ
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