宴の文庫

□第2章〜5〜
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パタッ…パタタ…
近くで何かが落ちる音がする。

シュウは反射的に閉じてしまった目を恐る恐る開く…と

「!…ッシリウス!!」

目の前にはいくつもの針刃を肢体に受けたシリウスが立っていた。
急所は免れたものの、かなりの数が足や腕、脇腹に傷をつくり血をにじませる。

「…ッチ…。」

ふと音もなく消えた針刃…、傷から滴る紅にシリウスは忌々しげに舌打ちをした。
手に持っていた刀を握りなおし、背を向けたままシュウとユリアに声をかける。

「結界をはって、なるべく私に近づくな」

シリウスに言われた通り、ユリアが結界を張った直後
フと辺りの雰囲気が変化した。
冷やりとしたものが首筋を撫で、シュウたちの体を硬直させる。

「我、戦慄を司りし紅なる神子…。」

ポツリとシリウスが言葉を口にすると…
辺りの空気がさらに冷たくなり、鋭く変化する。
紫暗の瞳が紅へと変わり、それに共鳴するように刀の刃も朱に染まった。

「…ッ…シリウス」

その変化に、シュウは息を詰まらせる。

「すぐ、終わらせる。」

シリウスがそう、呟いた瞬間…
シュウたちの目の前にシリウスの姿は無く…

「!、どこに…。」

「ここだよ、下衆ヤロー。」

いつの間に移動したのか、シリウスはジンの背後に回りこんでいた。
刀を勢い良く一閃する。
空の切れる音、布の裂ける音
ジンは反射的に避けたが脇腹に傷を負った
傷を押さえながら後退したジンは手に炎を生み出し、シリウスに向けて放つ。

「炎陣〈フレイム・レイブ〉!」

炎はシリウスに取り巻くように襲いかかっていく。
音を立ててうねる炎をシリウスは
「五芒守護壁〈ペンタクル・ディフェンサー〉」

バチィィィイ!!

障壁を作り出し唸りを上げる炎を消滅させた。
衝撃音と、爆煙が薄れ周りがはっきりと見え始める…が
目の前にいたはずのジンの姿が無かった。
シリウスは注意深く辺りの気配を探るがどこにもない…

「…逃げたか」

刀を鞘に戻し、シュウたちのほうへ戻る。

「シリウス」

「アイツは逃げたらしい、セイレーンは死んだ…とりあえず街に戻るぞ。」

自分の傷の手当をしながらシリウスは歩き出した。
シュウとユリアも後を追いかけ町へ足を進める。
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