宴の文庫

□第2章〜4〜
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それは、一瞬だった。

数千の妖人が津波の如く、シリウス達に襲い掛かった…が

「な、バ、バカな!!」

数分…いや、数秒の出来事がセイレーンを驚愕させた。
その出来事とは…

「フ…まるでゴミだな。」

たった一人で、一本の刀で…シリウスは数秒にして自分達を囲んでいた数千の妖人
その全てを倒し、塵へと変えてしまったのだ。
刀を紅く染めている妖人の血を振り落とし、シリウスはセイレーンを見据える。

「…ッ…き、貴様ァ!」

周りの妖人を一瞬で倒された悔しさと怒りをあらわにし、シリウスに飛びかかろうとセイレーンが牙を向けた…その時

「炎刃衝波〈レイジング・ハーツ〉」

突然邸内に男の声が響く。
それを合図に、奥の闇から剣の形をした炎がセイレーンを貫いた。

「ッ――!」
声にならぬ苦痛の叫び…その瞬間
セイレーンの肢体は砂のように崩れ始める。

「がっ…な、何故…ジンさ、ま」

跡形もなく、ザラリと音を立てて消えた

「な!」

「っ―!」

目の前で起こった惨状にシュウとユリアは言葉もなく、ただ呆然と立ち尽くす。
そんな中、シリウスはセイレーンを貫いた炎が飛んできた方…奥の闇を睨み、静かに声を発した。

「相も変わらず、冷酷な事をするな…ジン」

シリウスの言葉に一人の青年が暗闇の中から姿を現す。
朱にちかい赤髪に、鮮やかな紅の瞳…パッと見170cmくらいの背…シリウスと同じか、または上の歳か…人と呼ばれたその青年は階段の上からシリウス達のいる広場に降り立った。

「久しいなぁ、シリウス。」

ニヤリと笑う人の言葉にシリウスは

「テメェが何故ここにいる…。」

人の事を鋭く睨み、言葉を発する。

「何故?カイの命令だからに決まってるだろ。」

ジンは不敵に微笑んだまま…言葉を続ける。

「貴様を殺すのは自分だとカイが言ったんでな…必要のないヤツを消したまでだ。」

「そんなの…あんまりだろ!仲間だったんじゃねぇのかよ!」

シュウが叫び、悲痛な表情を浮かべる。
そんな彼にジンは

「仲間?まさか、オレはあんな下衆共ただの駒としか思ってねぇよ」

嘲笑い吐き捨てるように言い放った。

「テメェ!…っ…!?」

今にもジンに向かって走り出そうとしたシュウ
だが、シリウス背を向けたままシュウの前に立ち塞がった。

「シリウス!何で…「お前に奴は倒せん」…でも!…っ!」

シュウがシリウスの変化に息をつまらせる。
シリウスを取り巻く空気が一瞬にして冷やかなものに…殺気へと変わった。
佇んでいたジンもその事に気がつく。

「チッ…さすがだな、その殺気。」

ジンは炎から剣を生み出すと刃をシリウスへ向けてかまえた。
シリウスも手にしていた刀をジンへ向け、シュウ達に後方に下がるよう指示する。
シュウとユリアが自分から離れたのを確認するとジンへと踏み込んだ。

ガキィィィィィイン!!
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