宴の文庫

□第2章〜1〜
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いや・・・いやだ。
もう、何も傷つけたくない、壊したくない。

「フッ・・・神子がこちらに向かっているよう
だ・・・殺せ。貴様ならできるだろ?」

もう、嫌だ・・・

「・・・わかり、ま、した」

誰か、助けて!


とある森の中・・・シリウスとシュウの二人は次の街に向かって歩みを進めていた。

「・・・ったく、いつまで経っても木、木、木、いい加減街は見えねぇのかよ!」

我慢の限界だったのかシリウスの後ろをついて歩いていたシュウが文句を叫んだ。
唸りを上げるシュウを無視してシリウスはスタスタと歩いていく。

「なぁ、シリウス!」

「・・・少しくらい静かにしてくれ。」

いい加減、うるさいとでも言うような呆れた表情をして、シリウスは溜息とともに言葉を吐きだした。

「だってよ〜!」

「グダグダ言う前にとっとと歩・・・!!」

ドォォォオン!!
森の中に轟音が響きシリウスの言葉を遮る。

「何だ!?」

砂煙が上がると同時に数十体の妖人がシリウスとシュウを囲んだ。
二人は背を合わせ、それぞれの刃を手に取る。

「どうやら、囲まれたようだな。」

通常なら慌てるはずの状況下だがシリウスは冷静に目の前を塞ぐ妖人たちを見据える。

「・・・そういうわりには、冷静だよな。」

二人を囲む妖人は隙ができたとでも思ったのか、シリウス達に向かって踊り出た。

「ガァァァア!!」

雄たけびを上げシリウス達に刃を向ける。
シリウスは襲い掛かってくる妖人たちを舞うようにすり抜け背後につく。

「避けろよシュウ!」

シリウスの声にシュウは数人の妖人を薙ぎ倒し後方へ跳躍した。
タイミングを見計らいシリウスは呪を紡ぐ。

「大地よ轟け、我が声に応えよ。
池衝裂牙〈グレイブ・ファング〉。」

妖人達の立つ場所から地を伝い衝撃波が広がり次々と吹き飛ばしていく。
悲鳴が上がり妖人は消滅していく・・・が
一匹が逃れその牙をシュウへ向けた。

「死ねぇぇぇえ!!」

「なっ・・・っ!」

妖人の鋭い刃がシュウの身体を引き裂こうとした・・・次の瞬間。

「切り裂け!
風牙月衝〈ルーン・シルフィ〉」

ヒュンッと言う空を切る音と共に三日月型の刃が妖人の肢体を切り裂いていく。

「ギャァァァア!」

悲痛な叫びが上がり、妖人は灰になっていく・・・
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