宴の文庫

□第1章〜3〜
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「ぐぅぅ・・・貴様ァァァア!」

シリウスに切り付けられた傷口を押さえながら妖人は怒りの咆哮を上げた。
ボタボタと音を立て流れ落ちていく血が大地を汚す。
シリウスは咆哮する妖人を見据えたままシュウへ言葉を放つ。

「立て、シュウ・・・刃を、剣を構えろ。」

シュウは飛ばされた剣を拾上げ、シリウスの隣へ・・・

「アンタ・・・ほんと、何者だよ。」

溜息とともに言葉を吐き出したシュウ、けれどその表情からは怒りは消えていた。
その表情を見たシリウスはシュウに向かって微笑み、視線を妖人に戻す。

「さぁな・・・私はただの神子だ。」

シリウスはそう言い終えると同時に、妖人に向かって踏み込んだ。
妖人はそれに気付くと、右腕の肘から下を刀身へ変化させ シリウスに向かって横一文字に薙ぎ払う・・・が
ヒュッ!
空を切る音・・・その手に者を切った感触はなく、目の前に迫っていたシリウスの姿が消えていた。

「なっ!どこに・・・!」

瞬時にあたりを見渡すがシリウスの姿は見えない・・・

「ここだよ、下衆ヤロー」

突如、妖人の背後に姿を現したシリウスは舞うように回し蹴りを繰り出し、妖人を吹き飛ばし着地する。
それと同時にいくつもの言葉を紡ぎだす。

「御霊集いし地の理を犯すモノ、神の楔、光の鎖、彼の者を捕らえよ。」

球状の光が妖人の四方を囲む。

「光鎖神錠〈ロック・チェイン〉」

バチィィィイ!!
激しい音とともに球状の光から鎖が飛び出し、妖人を捕らえる。

「ガッ!・・・何!?」

妖人は逃れようともがくが、鎖はピクリとも動かず むしろ締まっていく。
シリウスはシュウに目を向ける。
それに気付いたシュウはコクリと頷き双剣を構え、妖人へ向かって踏み込む。

「妹の・・・リアの仇!」

双剣の刃が妖人の四肢を捉える。

「ひぃ!止め・・・!!」

シュウは妖人の叫びに耳を傾けることなく、刃を振った。

「双牙・十字裂斬!」

双剣が妖人の身体に美しい十字痕を描く。

「ギャァァァア!!ー・・・」

悲痛な叫び声が上がり、妖人の身体は砂と化していく・・・
ザラリと跡形もなく消え、何も残る事なく風に散っていった。
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