宴の文庫
□第1章〜2〜
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振り下ろされた刃に反射的に目を閉じた・・・
けれど、一向に死という名の衝撃は来ない
その理由は・・・閉じていた瞳を開く事でわかった それは
神子・・・
シリウスの刀が妖人の振り下ろした刃を受け止めていたのだ。
ギッギギギ
刃のこすれる音が耳をつく。
キィィィインという高い金属音とともにシリウスは妖人の刃を払い除けた。
「アンタは・・・。」
目の前に姿を現したシリウスに驚き呆然と立ち尽くす。
「つっ立ってるヒマはない、剣をかまえろ・・・来るぞ!」
シリウスの声を合図にしたかのように、妖人達が一斉に躍り掛かってきた。
双剣を構え直し、自分に向かって飛び掛ってくる妖人共を薙ぎ払う。
「いい加減、しつこいな・・・頭株を誘き出すか・・・。」
シリウスの発言にシュウは息を切らしながら問う。
「・・・ッ・・・誘き出すって、どうやって・・・?」
シュウの言葉にシリウスは薄っすらとだけ微笑み、視線を向かってくる妖人達へ・・・鋭く睨むと手を空へ掲げる。
「どうやって?・・・そんなもん周りの奴らを一掃すればいいだけだろ。」
そう、淡々と答えると同時に、シリウスの掌にバシバシと音をたて、光の球が放電する。
「一掃って・・・「死にたくねぇなら、ちょっと伏せてろ。」へ?・・・!」
言葉の意味を理解したシュウは屈んで低い体勢をとる。
それを尻目に確認すると、シリウスは雷撃を辺り一帯に放った。
「堕ち逝け・・・雷光旋波〈エレメント・スレイヤ〉。」
雷撃の刃が辺り一帯に存在していた妖人達を貫いた・・・ただ、一匹を残して。
その一匹は明らかに他の妖人とは違う『何か』がそいつを侵食していた。
「ぐぅ・・・役立たずな・・・。」
唸るように吐き出された言葉が風に虚しく吸い込まれる。
「あの野郎ォ・・・!」
ポツリと呟くと、シュウは剣の柄にギリリと力を込めて握った。
その様子の変化に気付いたシリウスは視線を妖人から外すことなく、
後ろで怒りの感情を露にしているシュウに語りかける。
「何を考えている・・・何故、そんなに怒りに囚われている。」
シリウスの言葉にシュウは我に返った。
「俺は・・・何も・・・ッ!」
弁解しようと口を開くシュウ・・・だが、怒りで自我を失っていたのは事実
言葉に詰まる。
心の中で何かが湧き上がる感覚がする。
「・・・心の闇は人のをも喰らい尽くす、今のお前はこの戦いに邪魔なだけだ。」
その一言にシュウの中で何かがブツリと音を立てて切れた。
「俺はアイツを殺さないといけない!・・・妹の・・・家族の仇であるアイツを・・・!」