□偶然と出会い
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やっと着いた…。

早歩くこと5分
何でこんなにも遠いんだ


ガラガラガラ


教室に前の戸から入る

昼間と違ってガランとしており、窓からさす夕日が眩しい


こんなにも雰囲気違うんだ



「ねぇ、何してるの?」



えっ


声がした

透き通るような男の子の声


「こっちだよ」


声がする方に振り向くと窓から一番遠い際、最後列の席に声の主は座っていた


「あ、ごめん」


「ごめん、じゃなくて何してるの?」


夕日で色はよくわからないけど、綺麗なウェーブかかった髪に端正な顔立ちをした男の子

ウチのクラスにいたっけ?


「いえ、忘れ物を取りに…。このクラスの人………ですか?」


見覚えのない顔

でも私、クラスの半分も人覚えてないからあり得るし


「ふざけてるの、藤原さん」



同じクラスの人だったっぽいー!

誰だっけ、この美人くん


普段の私って、授業受けて休み時間はiPodでかるた聴いて、昼休みは昼練行って……。
クラスになじんでなーい


どうしようどうしようどうしよう


でもこの人、オーラっていうか

風間さんに似てる

何か抱えてる、何か背負ってる…そんな雰囲気


「すいません、お名前を……。」


「フフッ」


ガクガクするような怖いオーラから一変、男の子は笑った


「?」

「本当に知らないとはね。気に入ったよ、藤原さん」


クスクスと笑い私を見ている
まるで゙おもしろいもの゙を見るような目で


「俺は幸村精市。同じクラスだよ」

「はじめまして、幸村くん。私は藤原葵。」


やっぱり同じクラスだった。
恥ずかしい…
クラスの人ぐらい覚えないとかなぁ


「フフッはじめまして、藤原さん。」

幸村くんは綺麗に微笑む
美少年って感じ


「幸村くん部活は?」


こんな放課後に教室にいるなんて、どこにも所属してないのだろうか

なら是非かるた部に……


「テニス部だけど、今はクラス委員の仕事中。」


残念!


「そっか幸村くんがクラス委員だっけ。女の子のクラス委員は?」


クラス委員は男女一人ずつ
もう一人いるはず…


「最初はいたけど帰ったよ」

「そっかー、お疲れ様です」


幸村くんは話しながらも一人せっせと手を動かしている


「藤原さんこそ何しに来たの?」


「うん、私は手帳を忘れて」


すっかり忘れてた手帳取りに来たんだった。
自分の席に行き中を確認する


「やっぱりあった!!」

「フフッ、よかったね」

「うん」


パラパラとめくる
やっぱり予定ないから、かるた会かなぁ

想像すると思わず、手が素振りをしてしまう


「その手、素振り?」

「うわぁぁぁ」


素振りを見られてしまった

札思い浮かべると手が出ちゃう私の悪い癖


先輩方にもやめろやめろ言われている


「い…今のはつい…」

は…恥ずかしい
関係ない人に見られると恥ずかしいからやめろって言われてたんだな


「藤原さん、部活は何部?」

「きょ、競技かるた部!すごい楽しいよ」


札が頭に浮かび、また素振りの手が出る


「うわぁ、また出ちゃった。」


ついさっき思ったばかりなのになぁ。


「フフッ、かるた好きなんだね」


幸村くんは私をバカにするわけでもなく、優しく笑う


「うん!相手よりはやく札を取れたときの快感。たまらないよ」

思わずニヤニヤしちゃう


「かるたを思い浮かべてる藤原さん、生き生きしててすごく可愛いよ」

幸村くんは作業する手をとめて、まっすぐ私を見ていうもんだから私はポカーンとしてしまう


「い…や。…そんなそんな。言われたことない」


口はパクパクするけど上手く言葉にならない


「でも動くとダメだな」

「酷い!!」

「フフッ」


幸村くんが意地悪に笑うから私までおかしくなっちゃって、私も笑う

幸村くんも笑ってて、私も笑って。


…居心地がいいなぁ


「…フフッ、おもしろいなぁ藤原さんは。ところで…、時間大丈夫?もうすぐ下校時間だけど…」


はっ……
私としたことがっ

かるた会〜


「ありがと幸村くん、これからかるた会行かなきゃ!」

「え」

手帳を鞄にしまってクルッと踵を返す


「邪魔してごめんね。おしゃべりできて楽しかったよ。じゃあまた!!」


幸村くんにそう告げて、私はマッハでかるた会に向かった



「フフッ…君は本当に
面白い子だね」


幸村くんが一人そう呟いたのを知らずに









(遅いな葵ちゃん)(早くかるたしたい)(面白い子みーつけた)



1話fin.
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