□偶然と出会い
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「聞いた〜?テニス部今年も全国だって」
「うちの男テニハンパないな」
「顔だけじゃねぇのかよ、かなわねーな」
「私、仁王君すきー」



「…そう言えば、かるた部も全国行き決めたとか」





出会いと始まりの春が過ぎ、ジメジメとした夏へと季節が移行する

だいたい入学して少し経ったこの頃が友達も固まり、落ち着いてくる頃








「おも」
バァァアアン


札が舞う

ある一室


広い立海敷地内の中で一室だけは静けさに溢れている

息を吸う音、はく音

声になる音


「さ」
バァァアアン


そして札が消える




「「ありがとうございました」」



その言葉を境に緊張の糸が解ける



「葵ちゃん、すごいね!ついにアノ天海先輩に勝っちゃうなんて…」
「俺、練習なのに手に汗握ったぜ!!」


わやわやと人が集まってくる

あの決まり字が〜とか、同級生の子たちが騒いできてるけど私は興味を示さない


「そんなことないよ。」



すごいことではない
目指しているかるたにはまだまだ及ばない


あの、初めて見たかるたに…


私がかるたに出会ったのは中学2年生のとき。

それはとても衝撃的だった


速くて、キラキラしてて、美しくて…。
こんな競技があるのかと感動した

そのかるたをしていた人は、とにかく真っ直ぐに見ていた
札と相手と自分を。

いつか強くなってこの人みたいなかるたをしたいと思った


「ついに夏野に勝ったか…」


それがこの人

風間籐椰…。


夏「トーヤ…見てたか。」


風「部長だからな」


立海大競技かるた部部長、風間籐椰
幼い頃からかるたに触れ天性の聴力を持つ
相手を観察することにも長け、絶妙な札送り
そして……、現名人。

日本で一番かるたが強いということ。

私はこの人のかるたに魅せられ今ここにいる



夏「葵ちゃんの手、中盤から伸びてきた…」

風「この゙しら゙は大きかった」

夏「あのときはまだ゙しの゙も残っていた。何で取れたんだ!?」

「感じたんです。゙しの゙の色じゃないって」


風「………」


風間さんは私をジッと見て、今度は笑う


風「夏野ちゃんが負けるのがわかったよ」
夏「トーヤ!!こんなときまで゙ちゃん゙はやめろー」


今対戦したのが天海夏野
一見普通にかっこいい男の子なのだが、自分の名前がカワイイのを気にしている
かるたは小学校からやっているらしく、とても強い
下がD級ら上A級まである中で彼はA級

ちなみに私はB級だ




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