DMC第一部

□陽射し
1ページ/1ページ


目の向こうに窓。そして青空。白い羽根雲を浮かべた清潔な秋空が、スラムの上にも広がっている。その向こうに素晴らしい太陽。

秋の陽射しは柔らかくて、こうして横たわっている廊下の木の床も、自分も、ふんわり暖かく包まれる。今日は、窓の外を好きなだけ眺めて咎められない幸運な日。


昔、クリーム色の犬が近所にいた。年寄りで、いつもテラスに寝そべっていた。遊んでもらうよりも、日溜まりで寝ている方が好きな犬だった。ろくに番もしないくせに可愛がられていて。名は、何といったかな…。仕様のない駄犬だったが、心地良さそうな寝顔や寝息に震えるヒゲ、飼い主の愛情に安心して寛ぎきった様子は、心地のいい眺めでもあった。

…縁側犬(えんがわいぬ)。
そんな仇名を弟と二人してつけたな。


欲しいだけ陽射しを浴びながら頬笑むと、口から少しの液体が床に溢れた。階下のシャワーの音が止むまで、今日は俺も縁側犬だ。

もう一度見上げると、憧れ続けた太陽が、美しい青空の中央にある。帰ることのできたこの世界の証しが、力強くそこに輝く。

シャワーの水音が止まった。浴室で動くダンテの気配。俺も、肺からの出血が止まれば、ここから動かなければならない。ダンテが来るのと、どちらが先かな。



階段を足音が上がって来る。


縁側犬の幸せは、あとほんの少し。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ