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ハルちゃんの友達は女の子が大半の割合を占める。
それはそうだよね。だって女子校だもの。
でも私は、そのことがすごく嫌!
私よりもハルちゃんの事知ってる女の子がいっぱいいる。ハルちゃん以上に私を知ってる子なんて、花くらいしかいないのに…。



「…なんて、こんな事言われても困っちゃうよね」

いつもより多めにケーキを頬張っているハルちゃんにそう問いかけると、その膨らんだ頬を紅く染めた。
そしてブンブンと首を横に振って、…ゴクン。(あ、飲み込んだ)

「そんなこと無いです!嬉しいです、とっても!」
「ふふっ、ハルちゃん、口の周りクリーム付いてる」


今はデート中。行きつけのケーキ屋さんで、ゆっくりとティータイムを過ごしている。
お店のリニューアル記念でケーキがいつもより安く買えたおかげで、ハルちゃんも私も目の前にあるケーキの数が多い。

「ふふふっ」
「はひ?何かおかしいですか?」
「うん、あのね、普通は、ケーキの値段が安くなったからってこんなに食べないよね」
「いつもの金額で買えるケーキの数は変わっても、胃袋の大きさは変えられませんからね〜」
「もし全部タダだったら、私たち一体どれくらい食べれちゃうんだろうね」
「はひー、ケーキ屋さんも真っ青な反比例です」

そんな笑い話をしながら、また新しいケーキにフォークを刺す。(あれ、これ何個目だっけ?)
時間がちょうどおやつ時なためか、人が多くなってきた。そういえばもう結構な時間ここにいるなぁ、なんて思うのだけれど、まだ席は譲れそうにない。

ふと、お店のBGMと周囲の雑音に混じって、聞き慣れた音がした。

「(あ、これって…)」
「京子ちゃん、携帯鳴ってますよ」
「えっ?う、うん…」

ハルちゃんがそう教えてくれたのと、私が携帯を取ろうとしたのは同時だった。
音の正体はまさしく私の携帯電話の着信音で、メールが来たのを知らせるものだった。
メールの送り主は…花。

* * * *

今何してる?暇なら付き合ってほしいところがあるのよね。

* * * *

返信のフォームを開いたところで、ハルちゃんの視線に気付く。

「ん、えっとね、花からメールきたの」
「あ、花ちゃんですかー」

教えてあげると、クスクスと笑って(なんとなくだけど苦笑いっぽいような…?)、「どうぞ続けてください」と言った。

何て返そうか考えながら文章を打っていると、ハルちゃんが落ち着かなさそうにしながら口を開いた。

「ハル、本当に嬉しいです」
「え…?」
「さっきの話…京子ちゃんはヤキモチやいてくれてるって事ですよね」
「あ…う、うん」

改めてそう確認されると恥ずかしくなって、思わずどもってしまった。
文字を打つ手を止めて、ハルちゃんの話に聞き入る。

「ハルもおんなじなんですよ。いつも花ちゃんを羨ましく思うんです」
「ハルちゃん…」
「お友達の数に関係なく、ハルが京子ちゃんを好きな分だけヤキモチやいてしまうんです。だから、不安は同じくらいあるんですよ」

照れながらそんなことを言うのが可愛くて、無性に抱きしめたくなってしまった。

そう…だよね。友達の数なんて関係ないんだ。
お互い同じくらい不安で、でもそれは決して悪いことじゃない。私達の"好き"を実感できる、とても素敵なことだから。

「それにハルは、花ちゃんが知らないことだってたくさん知ってると思ってますから…」
「?」
「例えば今だって、京子ちゃんがどこで何をしてるのか。誰と居て、どんな事を話してるのか…それはハルにしか分からないんです」

そんな小さなことでも、知ってることが幸せなんです…と、ハルちゃんは笑った。

その言葉にハッとして、打ちかけのメールを読み返す。

* * * *

今ハルちゃんとデートしてて、ケーキ屋さんに

* * * *


私はほんと分かってないなと思った。
とりあえず打った分の文章を消して、『秘密だよ』とだけ送ることにした。

これで今、一番私を知っているのはハルちゃんで、一番ハルちゃんを知っているのは私だ。

「ありがと、ハルちゃん」
「はひー照れますね」
「あはっほんとだね」

照れ隠しに、またケーキを口に運ぶ。


あ、そういえば…

「ねぇ、さっきよく私の着信音だって分かったね。最近変えたばっかりなのに…」

しかもあんなに早く…。

「確かに一回程度しか聞いてないんですけど…京子ちゃんのことだと覚えが良いんですよねー」
「え……」

なんて可愛い事を言ってのけるんだろうか。
今度こそ本当に抱きしめてしまおうかと思ったけれど、お店の中だしやっぱり我慢。つらいけど、我慢。
後で二人きりになったら…ね!


さて、悩み事も(一応)解決したわけだし…

「なんか…我慢もしたらもっと食べたくなっちゃった♪」
「がっ我慢!?これだけの量を食べてまだ我慢してたんですか!さすがです!」



そ、そういう我慢じゃないんだけどなぁ…。




ほらそこに、愛。


(二人ですること全てに愛を感じるの)





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まる子さまリクの京ハルです。
テーマは"ほのぼのぐだぐだ可愛く"でした(長
まる子さまのみ、お持ち帰りOKです。

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