text
□
1ページ/1ページ
今日はハルとデートで、遊園地に来た。
ここは、私にとって憧れの場所…みんなが笑顔になれる、素敵なところ。(そう教えてくれたのはテレビだった)
ブラウン管の中に見ていただけのそんな景色が、今目の前に広がっている。
「はひーっ懐かしいです!ハル、昔よく両親と来たんですよ」
両親…か。
きっと誰もが持っているであろう、そんな思い出が…私には、無い。
「そう、なんだ…」
「はい!クロームちゃんはどうでした?」
「っ…私は…、」
「……?」
「…来たこと無い。家の周りには、こういう所…無かったから…」
うそつき。
本当は『私の両親はこんな場所に連れて来てくれるような人達じゃなかったから』…でもこんな事言ったら、ハルは絶対悲しむもの。言えない。
「そうなんですか!じゃあクロームちゃんと遊園地に来たのはハルが初めてなんですね!嬉しいですー」
そんな事まで喜びに変えられるなんて、やっぱりハルは素敵な子…そういうところが大好き。
「今日はたくさん楽しみましょうね!」
「…うんっ」
小さい子どものようにはしゃぐハルに手を引かれて、色んなものに乗った。
コーヒーカップに向かい合って座ったり、手をつないだままジェットコースターに乗ったり、お化け屋敷では怖がるハルをなだめたり(抱きついてきたハルが可愛くてお化けなんか目に入らなかった…)、観覧車の中で何度もキスしたり…普通の恋人みたいで、本当に楽しかった。
閉園時間も近づいてきた頃、ハルは「最後にあれが乗りたいです」と、メリーゴーランドというものを指差した。
「ハル、いつも最後はメリーゴーランドだって決めてるんです」
一段と装飾の多い大きい馬に跨りながらハルが言う。
その横の馬に、私も同じようにして跨った。
「なんかお姫さまになったみたいで…」
「うん…ハルに似合う」
「ふふっ…クロームちゃんもですよ!」
低い機械音に、優雅なBGM。それと共にゆっくりと動き始める床と馬。
ああ、本当にお姫さまみたいよハル!
「…ハル、…」
「はひ…?」
「私は、ハルの王子さまになれてるかしら…?」
そう聞いたら、とびっきりの笑顔で「もちろんです!」って答えてくれた。
ぐるぐるぐるぐる…
同じところを回り続けるメリーゴーランドは、まるで"輪廻"のようで。
でも…大切な人がそばにいれば、退屈な繰り返しもきっと、輝くのではないだろうか…
ねぇ、骸様…?
人生をメリーゴーランドにしましょうか
帰り道、ふと思い出した言葉。
『みんなが笑顔になれる、素敵なところ』
…テレビの安っぽい売り文句も、なかなか信用できると思った。
********
匿名様のリクで、『髑ハルで遊園地』を書かせていただきました!
リクありがとうございました^^