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「お前はコロネロに似ているな」


何気ない会話の中で、ふと漏らした一言。

ハルは顔を歪めた。 しまった、と思った。
その言葉の意味をどう捉えたかなんて、聞かなくてもよくわかった。

「っ…」

ポタリ、と、彼女の頬を一筋の涙が流れ、落ちた。

「っぁ…ごめんなさ…い…っ」

そう言って、ハルは部屋を出て行ってしまった。
オレは自分の馬鹿さに呆れて、追いかける事さえできなかった。

「っくそ…!!」

壁に拳を叩きつける。

何が"ごめんなさい"だっ…傷つけたのはオレだろう…!?

「…っ」



…ハルと初めて会った時、能天気そうな笑顔がひどく癪に触ったのを覚えている。
アイツが…コロネロが重なって見えたんだ。
姿形、声も性格も行動も…それこそ性別だって違うのに、笑顔だけはいつも苛立つくらい似ていた。芯のある、温かい笑顔…。

だが…


「違、う…」

違うんだ、ハル。
オレは…








*


「ハル、」
「!」

やっぱりここか…。
全速力で向かった先は食料庫。思った通り、少女はそこにいた。
名前を呼ぶと、ピクリと体を震わせた…が、顔を見合わせようとはしない。背を向けたまま、膝を抱えて俯いている。

「ハル…」

もう一度名前を呼ぶ。
それでも変わる事はなく、ただ沈黙が流れる。

「っ…、…」

伝えたい事があるのに、上手く言葉が出てこない。

「ハ…」
「ラルさん、ハルは…」
「オレ…は、」
「ハルは、コロネロさんの…」
「ちが…う…」
「コロネロさんの…代わり…ですか…?」
「違う!!」

叫んだのと同時に、その華奢な体を抱き締めた。

「違う…違うっ…」
「ラルさ…」


オレとコロネロは恋仲だったわけじゃない…。だけど好きだった。大切だった。

だがそれ以上に…


「オレは、お前が好きなんだ!愛おしいんだっ…!」
「ラルさん…」
「側に…、いてほしいんだ…!今が、幸せなんだっ…」
「っ…」
「でも…アイツは死んだのに、オレだけが幸せなんてっ…、」

そんなの、許されるわけがないのに…!

コロネロへの罪悪感が、
ハルへの想いが、
交差して、ぐちゃぐちゃで、苦しくて、

「その苦しみから逃げたくて、ハルにアイツを重ねて、」
「はい…」
「オレは、コロネロに、笑っていてほしかったんだ…」
「…はい」

ハルは腕の中で向きを変え、向き合ってくれた。
やっと見ることの出来た顔はやはり少しだけ崩れていて、胸が痛んだ。(泣かせることなんて絶対無いと思ってたのに…)

だが、ハルは微笑んで言った。

「ラルさんの優しさは、きっと伝わってます。コロネロさんも、ラルさんに笑っていてほしいはずですよ」
「っ、」
「もちろん、ハルも…そう思ってます」



…ああ、そうだ。

アイツがオレに感じていてほしかったのは、罪悪感なんかじゃなかったはずだ。
アイツは、アイツは…、誰よりもオレの幸せを願っていてくれたのに……肝心のオレは、一番大事なものを見失っていた。


コロネロ…
もしも天国というものがあるなら、お前はそこでも笑ってくれているのか?





「…ハル、」

スッと両手で頬を包み、瞼にそっと口付けをした。
はひ、と小さく声を漏らし、紅潮。その姿が狂おしいくらいに愛しい。

「ありがとう」




「オレも、お前に笑っていてほしいと思う」

いつも、ずっと…



「…はい!」

好きだから一番に願うこと


(思い出の中のアイツは、いつも笑っている)




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翠様に捧げます!
甘、ギャグ、と書いたので今回はシリアスにしてみましたです。基本、うちのラルはハルに対してはとても素直です。
こんなので良ければ貰ってやって下さい。リクエストありがとうございました^^

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