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□Gloomily
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暗い暗い土の中

静かに目覚める土蜘蛛《ソレ》は

地上《ウエ》を歩く者が

病気で弱るのを

今か今かと待っている










時々、どうしても光が浴びたくなる。


そんな時、人間の気配が無くなるのを待ち、

静かにここを出る。



人の姿と変わりないから

一度土の中から出てしまえば、

何も恐れることなどない。


自分が人間でないと気付く者など、

今の時代、そうそういないだろう。



俺は人間が嫌いだ。

今の人間は、財産、名誉…

そんなものばかりを求め

時には、同じ人間ですら踏みにじるのだ。



嗚呼

なんて醜い。


自分のような者よりも

醜い者がいるなんて、


なんて醜い世界。







病院



病や怪我を治す場所を人間はそう呼ぶ。

ここには、心を病んだ者も来る。


土蜘蛛の俺にとっては、住み心地の良い場所だ。

弱った人間が限りなく現れる。

飢えることが無いのだ。



元々死にかけたような人間なのだから、

いつ喰ったって同じようなことだろう。





今も昔も変わらないことがある。

それは、金のかかる奴など、

面倒な者が死んだ時、

表面上は悲しんではいるが、

内心、喜んでいる者がいる、ということだ。



人間は醜い生き物だ。


まあ、

その方が、捕食者である俺達にとっては良い事だ。


罪悪感を感じずにいられる。



 
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