clap集
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「今日からこの課に配属となりました」
始め私の脳をくすぐったのは声だった
今まで1人の男性に依存することの出来なかった私は常に数人の男性と繋がりを持っていた
束縛もなければ、愛もない
ただ身体の体温を直接感じ、繋がることを優先とし、不要な感情が芽生えればお別れ
関係を持つ男が複数いるのを容認させ、ドライな関係ばかりを築き上げていた私が生まれて始めてと言えるほどの第一印象を、爽やかスマイルを浮かべ自己紹介をするその彼に抱いた
彼の声が欲しい
その声は低すぎず、渋すぎず
好青年の声帯をベースに、なんとも深みのある声
内容を理解することなく声だけに聞き入っていると、自己紹介はあっという間に終わった
「指導係は君にお願いしよう」
ハゲかけの上司が私を指差しながらニンマリと笑った
その後は上司に言われた通り基本的なデスクワークを教えたり、合間に普通の会話をしたり
どうやら彼は私よりも1年入社の早いいわゆる先輩だった
課が違うだけでこんなにも仕事が違うのかと、覚えることに専念せねばならない事を嘆いていた
日を重ねるごとに彼の声に魅了されていく私がいた
「気持ち良いか…?」
ホテルの一室、まっさらなベッドの上で見当違いな声が耳元で響き脳内を浸食した
「………」
あの声の持ち主に出会ってしまった以来、繋がりを心地よく感じなくなってしまった
それが何を意味するのか
さすがに自分でも気付いていた
ただ、その感情が未だに残っていたことに驚き、狼狽する
「もういい…離れて」
気持ち良いと感じることなく進めていた行為に嫌気が差した
何を言っているのか理解出来ないらしい目の前の男に睨みをきかせ、関係を持つ前に交わした約束の内容を口にした
「どっちかが不要な感情を抱けばお別れ
私、他の男ともお別れしなきゃいけないみたい」
全員と間柄を絶つのは容易ではなかった
なにがなんでも全て終わらせ、彼の声を間近に聞きながら改めて確信した
私は彼が好きらしい
胸中でそう呟くと改めて自覚した脳は胸の鼓動を速めた
胸の高鳴りを感じたのはいつ以来か
おまけと言わんばかりに体温上昇に伴って現れる頬の紅潮
犯罪的なまでに私の全てを惹き付け覚醒させる声を筆頭に声の持ち主自身にも惹かれていく
生まれて始めて1人の男性に依存出来る予感がする
この予感は外させない
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