黒バス

□繋がってるはずなのに、その心へは指先にすら届かない
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気づいたのは、考えるようになったのは、ほんと最近のこと。

話すこともやってることも今までとは何も変わらないのに、それでも以前とは何かが違うと曖昧ながらもオレは確かに思っていて。



一緒に話する時もワンオンワンやる時もバスケしてる時も、そこに居るのはオレの憧れ。
好きで憧れで尊敬もしてる。

しかしその好きはそれだけの好きなんだろうかと、最近になって考える。



(あー、もう、モヤモヤする)

着替え終わったロッカーの前、心の中でこぼす。

さっきまでワンオンワンしてる時はそのことしか頭になくて考えなんてしないのに終わるとすぐこれだ。
はぁ、と溜息をこぼすとドアの外に居る青峰っちに名前を呼ばれた。

「おい黄瀬なにしてんだ、さっさと行くぞ」

「ほーい」

外に居る青峰っちにそう一言返事を返す。
モヤモヤがとれないことにやつ当たりするようにほんの少し力を入れてロッカーを閉め、オレは青峰っちのいる方へと足を動かした。





二人だけの帰り道。
あっちあちーと服の胸元を手でばさばさとさせながら歩く青峰っち。
オレはそんな青峰っちの少し後ろを歩く。

いつもは横に並んで歩くのだが、今日はなんとなくそんな気にはならなくてほんの少しだけ開いているお互いの距離。
ほんとにほんの少しで、ちょっと歩けば横に並べるくらい。
けれどオレは歩幅も歩く速さもを変えず後ろを歩く。
そして前を歩く青峰っちの足元においていた視線をすっと上に上げる。

いつもと変わらない後ろ姿。
この位置からほんの少しだけ見える横顔。

毎日歩いている道は相変わらず暑くて。
セミの鳴き声は以前よりも少しだけ増えたような気がする。
そんな普段と変わらないのに、青峰っちを見るとどきりとしてしまうオレ。

なんなんスかこれマジで。
やっぱ、前とは違う。
青峰っちを見てると、なんか変だ。



(あ、これはもう、)

動いていた足はぴたりとその場で止まる。
自分の中でそう思ってしまえば、気づいてしまえばもうどうにもできなくて。
そこから一気にオレの頭を色んな思考がめぐる。

そうだとしても、青峰っちとどうしたいとかどうなりたいとかはなく、今のこのままの関係でオレは嬉しいし。

そもそも話してくれなくなったりぎこちなくなったりワンオンワンができなくなるなんていうのは嫌だ。
今のこのままでオレは十分で。
うん、十分だけど、
オレがそれを言ったら、青峰っちどんな顔する?

笑う?驚く?怒る?
例えどんな顔されても、一緒に居て笑えなくなるのは嫌だ。



うわー悲しくなってきた。



「・・・瀬、黄瀬っ!!」

「!!?はい・・・!?」

しばらくの間どこかにいっていた意識は青峰っちから大声で名前を呼ばれた事ではっと戻った。
びっくりして間抜けな声で返事をしたオレ。
しかしそれと同時に後ろから聞こえてくる車のクラクションの音にオレの声はかき消された。
少し長めに落とされたその音は車が通過する音と一緒に消えていった。
車の走る音もクラクションの音も消えてしんとなったその場の空気。

何が起きたのか分からないオレの頭でも今のこの状況はなんとなく理解ができた。

オレの左腕を掴んでいる青峰っちの右手。
そんなに変わらない身長差でもオレの体は青峰っちに収まっていて、青峰っちの胸元あたりに顔がある。
後頭部にはもう片方の青峰っちの手が添えられていて。いやこれは添えられているというよりもどちらかと言えば若干力が強い。ちょっと痛い。



「・・・えーっと、」



この状況は理解できてもどうしてこうなったのか分からなくて間抜けな声が口からこぼれる。
いやどうしてこうなったほんと。
すると後頭部にあった手は離れてすぐにオレの肩へと置かれた。
そのまま力が加えらればっと青峰っちはオレの体を少し離した。



「おっまえはバカか!!なんかやけに大人しいしオレがなんか言っても大して返事しねーし、そんで後ろ見たら車きてんのに急に立ち止まってるしで!!車道の途中で立ち止まるとか頭おかしいんじゃねーの?」

今日の中で久しぶりに目を合わせた青峰っちは早口でキレ気味で言ってきた。
それによって先ほどあのような状況になった経緯がおかげで分かったものの言葉の終わりは頭おかしいだった。なんとも失礼っスね。
それでも青峰っちの慌てっぷりというか焦りっぷりというか、それはすごく伝わってきた。



「青峰っちだって時々信号無視するじゃないスか」

「それとこれは全然ちげーだろバカ!」

少々荒めに言ってきた言葉の後にそう意見するとばしっと頭を軽くはたかれた。

「あだっ!なにするんスかもう!」

「うっせ!いいから行くぞ」

そう言ってオレの手を握って引っ張り、青峰っちは足を動かした。

「えっ・・・ちょ、」

青峰っちに引っ張られながらオレも足を動かし歩き出す。
というか、手。



「今日のお前危なっかしいからな」

青峰っちはそう一言言ってそのまま足を進める。
オレの手を引っ張る青峰っちの手はやっぱり大きくて暖かくて優しくて。



(あーもう、ほんとどうしてくれんスか。)

目の前の後ろ姿も今繋いでいる優しい手も、ぜんぶにどきどきする。
実際手つないでこんなにも近くにいるのに。
それでも全然遠くにいるみたいで。

一方的な感情を口にしたら、伝えたら、このモヤモヤはこの関係は変わるだろうか。
でもこんな時間を失くしたくないと思う自分がいる。


「青峰っち」

「あ?」

なんだよ、と名前を呼べばすぐに返ってきた声。
そんな青峰っちににっと笑って言葉を続ける。



「ううん、なんでもないっス」

そう言って青峰っちの手を握ったままふたり並んで帰り道を進む。






繋がってるはずなのに、そのへは指先にすら届かない











(なんかお前手ェ熱くねぇ?)
(青峰っちの手汗がすごいんスよ!べたべた!)
(んだそれ!)






















あとがき*
初の黒バス作品で青黄の話でした。
いただいたお題でかいた初めての青黄です!
切ない仕上がりにするつもりがかいていて気づくとそれに遠ざかっていて何回かあわわとなりました(゜゜;)←?
実は青峰っちも黄瀬くんのこと気になっていて好きっていうオチ。
この話かいておいてですがうちの黄瀬くんは青峰っちのこと好きだということは自分じゃ気づかない気がします(どないやねん
がんばって切ないものを目指したのですが近づいたのでしょうかこれ・・・!
かいていてとても楽しかった!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
13.08

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