好きだなんて、言えない。
明日も、明後日。
この先も。
『―――あたし、きっと男として美朱がずっと好きだったのね』
偶然聞いてしまった彼の想い。
いつも笑って、あたしの隣にいてくれた彼の優しさは『お姉さん』としてで。
優しく見守るように美朱に向けられていた視線は、彼女を想う一人の『男』としてのもので。
どうして気が付かなかったんだろう。
いつだって隣にいたのに。
柳宿をいつも、飽きるくらい見ていたのはあたしなのに。
その視線に気付いて、笑ってくれる彼の優しさが嬉しくて浮かれていた。
その視線の先にあるものが何だったのかなんて、考えたこともなかった。
出会った頃より、ずっと男らしくなった理由なんて考えたこともなかった。
全て、愛する彼女への『想い』だったなんて。
ねぇ、柳宿。
あたしね、貴方が好き。大好きなんだ。
気が付けば貴方のことばかり目で追ってたんだ。
気が付けば貴方のことばかり考えてたんだ。
貴方のことを考える度にね、胸が苦しくなるんだ。
きっとこれからね、貴方が美朱を見る度に、泣きたくなっちゃうと思うんだ。
同じ様にあたしを見てなんて、きっと無理な願いだから。
言わないよ、絶対に。
悔しいけど、柳宿の気持ち。今のあたしには、嫌っていうくらいわかっちゃうから。
「何ぼーっとしてんのよ」
「……柳宿って」
「ん?」
「ほんっと、バカだよね」
叶わないってわかってるのにさ。
柳宿も、あたしも。
「あんたに言われたかないわよ」
ほんっと、バカ。
好きだなんて、言えない。
明日も、明後日も。
これから先も、ずっと。ずっと。
頬を伝う涙を、呆れたように。だけど優しく拭ってくれるその温もりは、まるで全てを見透かしているかのように。
貴方が好きだから。
この想いはまだ閉じ込めたまま。
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またまた夢主片想い話。
美←柳←主です。
柳宿が美朱への想いを鬼宿に打ち明けるシーンを使った話はこれで三回目くらいです。すいません。このシーンすごい好きなんです。
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