宝物

□Star Light Festival
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美朱、と自分を呼ぶ声が聞こえ、美朱は部屋に彼を招き入れる。

時々、というよりも、毎日数時間ごとに、彼はこうやって彼女の部屋を訪れていた。

他の仲間たちとも分け隔たり無く接する彼なのに、最近の彼は、何故かわざわざ人目を盗んでまで、自分の傍に身を置こうとする。


美朱の部屋を訪ね、彼女の隣に座り、彼女と目線を合わせて言葉を発す、胸元に[柳]の証を持つ彼。



そんな彼の行動全てにドキドキする。

……鼓動が早い…。






ある日、いつものように柳宿が美朱の部屋でお茶をしていると、

「美朱、柳宿。今夜市街で祭りあんねんけど、一緒に行かへんかぁ?」

という、翼宿のお誘いの声が聞こえた。

柳宿は彼に渋めのお茶を出してやり、美朱の湯飲みにも注ぎ足してやる。

「そう言えば今日だったわね、市街のお祭り。商店街はもう、飾り付けとかされているのかしら?」

「あぁ、例年に比べて、めちゃめちゃ派手や言うとったわ。だもんで、今日は星宿様も、お供を付けて市街を回る言うとったで」

「へぇぇ、星宿も行くんだぁ。じゃあ今頃公務を終わらせようと必死だね、きっと」

美朱も興味深そうに、丸い瞳を輝かせる。

一国の皇帝が市民と同じように市街を歩くのだ。

それなりに煌びやかで、それでも目立たないように身なりを抑えて行くに違いない。



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