∞NovelA∞
□『想いの境界線』(後編)
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騒がしい会場を離れて、スタジオの側にある公園を二人で歩いた
吹き抜ける風が、レースのついた袖口をはためかす
サブローは、夏美の姿に少し見惚れながら隣を歩く
初めて見る服
ほのかに色づく唇
「あの…付き合って欲しいことって…?」
重い口を先に開いたのは夏美だった
「ああ…」
サブローはポケットに手を入れると、1枚の紙切れを取り出した
「これ…渡そうと思ってさ」
「これって、今日の公開録音の…いいんですか!?」
「バイトでもらったんだけど、オレは行かないから。
一応優先で入れるみたいだよ?1枚しかないんだけどね」
そう言って、微笑む
最初から夏美ちゃんに渡すつもりで持ってきたチケットだった
純粋に、喜ぶ顔が見たかったから
だから、今は余計な感情はナシにして
目の前にいる夏美ちゃんのために――
「じゃあ、ありがたく頂いちゃいます」
「ん…」
夏美はチケットを受け取ると、サブローを見た
そのまま時が止まる
まっすぐな青い瞳に見つめられて
「サブロー先輩…」
高鳴る心臓の音を聞きながら思った
――今しかない
いつも私のことを見ていてくれるサブロー先輩に応えられるのは