∞NovelA∞
□『想いの境界線』(後編)
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「……あっ!わ…私…っ」
呆然としているサブローに気づいて、夏美は慌てて体ごと離れると
いつものように真っ赤になって俯いた
「ち、違うんです!これは、その……」
――無意識だった
ずっと気づかない振りしてたけど、今のではっきりわかった――
「何が違うって…?」
「う……」
もう言い訳は通じそうにない
「だ、だからその…き、綺麗な顔だなって…」
「ふぅん…?」
言い訳すればするほど、深みに嵌っていく
すっかり小さくなった夏美の肩先をつかんだサブローは、耳元で囁いた
「キス…していい?」
甘い声が鼓動を速くする
「で、ででもっ、もうすぐ開場の時間ですよ!」
「大丈夫…少しだけ」
目を閉じた夏美に、柔らかいキス
耳から頬、そして唇――
「……っ」
触れ合うたびに感じる、お互いの存在
確かにここにある温もりは、嘘なんかつけなくて
サブローは両腕を背中に回して引き寄せた
心地よくて、時が止まったような感覚――