∞NovelA∞
□『想いの境界線』(後編)
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「夏美ちゃん…」
見つめ合う二人の距離を縮めて、サブローは手を伸ばす
頬を伝う指の感触に頬が赤くなるのを感じながら
夏美は手をあげて、サブローの手に自分のそれを重ねた
そして、瞳を閉じる
「……あったかいです、サブロー先輩の手…」
「…え…っ」
彼女の予想外の行動に、サブローは近づけた顔を少し離した
いつもなら、頬を染めて戸惑いぎみに俯くのに
「私…今日の公開収録にハガキを出したんです」
「623のラジオに?」
手を離すと、夏美は俯きぎみに話しだした
――今日だけじゃないだろ?
サブローは心の中で訊き返す
毎週届くハガキに、字を見ただけで判るようになったくらいなのに
「はい、ずっと相談したいことがあって…」
「相談…?」
あいにく、今日のハガキはまだ目を通していなかった
その方が生放送らしくなると、本番までオレには回ってこないらしい
だから…なおさら気になる、何の相談なのか
「夏美ちゃん、それって…」
「でも…もう解決しちゃいました…」
サブローの言葉を遮って、夏美は手を伸ばすと
銀色の前髪に触れて
そしてゆっくりと下がって、唇に触れた
そっとなぞる指先
「な、夏美…ちゃん?」