∞連載Novel∞

□第1章:睦月の迷宮
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「サブロー先輩っ」

「問題がなければ、もう2Fに辿り着いてる頃なんだが…まだ1Fだな」

装置のパネルを操作しながら呟かれた言葉に、ドキリとする

サブロー先輩が、向こうの世界に…

私の心は、もう決まっていた


「…どうやって行くの、これ」

「おっと、参加すんのかい?ククッ」

「うっさいわね!さっさと教えなさいっ」

「まぁ、焦んなよ」


クルルは、空のカプセルを開いて説明を始めた

「まず職業を選びな」

「職業…」

パネルに映しだされたグラフィックには、さっきやってた『異世界の迷宮』と同じキャラクターと職業が並んでいる

さっき選んだ、私の職業は…

「…じゃあ、レンジャーで」

「あーそれ、ドロロ先輩とカブリますねー」

「そっか…じゃ、メディック」

「日向冬樹だ」

やっぱり冬樹は回復系ね…


「じゃ、どれが空いてるわけ?」

「…パラディンだな」

「パラディン!?」

じゃあ、サブロー先輩は何なんだろう…

聞いてみたいけど、クルルじゃ何言われるかわかんないし

「…仕方ないわね。いいわ、それで」

「りょーかい。じゃ、入んな」


カプセルの中はひんやりとして寒い
足元から低い機械音が響いてくると、少し不安になってくる

ふいに、頭上からクルルの声が降ってきた

『あー、あと…
ここにある実体は、ゲーム中のダメージは受けないが、
精神のダメージは受ける』

「…どういうこと?」

『つまり、怪我すりゃ痛いし
もし、死んだ場合――』

一瞬の嫌な沈黙

『もう戻ってこれねぇかもしんねーな』

「な……」


それが本当なのか、ただの脅しなのか判らない

クルルの顔を見る前に、私は強い光の中に吸い込まれていった――


――つづく
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