∞連載Novel∞
□第1章:睦月の迷宮
3ページ/3ページ
「サブロー先輩っ」
「問題がなければ、もう2Fに辿り着いてる頃なんだが…まだ1Fだな」
装置のパネルを操作しながら呟かれた言葉に、ドキリとする
サブロー先輩が、向こうの世界に…
私の心は、もう決まっていた
「…どうやって行くの、これ」
「おっと、参加すんのかい?ククッ」
「うっさいわね!さっさと教えなさいっ」
「まぁ、焦んなよ」
クルルは、空のカプセルを開いて説明を始めた
「まず職業を選びな」
「職業…」
パネルに映しだされたグラフィックには、さっきやってた『異世界の迷宮』と同じキャラクターと職業が並んでいる
さっき選んだ、私の職業は…
「…じゃあ、レンジャーで」
「あーそれ、ドロロ先輩とカブリますねー」
「そっか…じゃ、メディック」
「日向冬樹だ」
やっぱり冬樹は回復系ね…
「じゃ、どれが空いてるわけ?」
「…パラディンだな」
「パラディン!?」
じゃあ、サブロー先輩は何なんだろう…
聞いてみたいけど、クルルじゃ何言われるかわかんないし
「…仕方ないわね。いいわ、それで」
「りょーかい。じゃ、入んな」
カプセルの中はひんやりとして寒い
足元から低い機械音が響いてくると、少し不安になってくる
ふいに、頭上からクルルの声が降ってきた
『あー、あと…
ここにある実体は、ゲーム中のダメージは受けないが、
精神のダメージは受ける』
「…どういうこと?」
『つまり、怪我すりゃ痛いし
もし、死んだ場合――』
一瞬の嫌な沈黙
『もう戻ってこれねぇかもしんねーな』
「な……」
それが本当なのか、ただの脅しなのか判らない
クルルの顔を見る前に、私は強い光の中に吸い込まれていった――
――つづく