俺が守ってあげたかった。
あの震える小さな身体を。
忌まわしい過去も、その呪いも悲しみも全て。
本当は俺が守ってやりたかったんだ。
幸せのとらえ方-ラビのその後-
あの日。
アレンの部屋に行ったあの日。
最初は本当に悩みを聞いてやろうと思っただけだった。
「相談のってやる!!!」
オロオロするアレンにそういって、ちゃっかり隣に座りこんで。
アレンがユウの事『好き』なんだって知ってたさ。両思いだってことも。でも。
俺は諦めが悪い・・・心の奥底でチャンスだなんて思ってた。
「僕は・・・弱い人間なんです・・・」
アレンはそう言って泣いていた。
自分が犯した罪は大きすぎる。
だから幸せなど望めないと。
「卑怯なんです・・・僕。」
ポツリポツリと本音がアレンから出てくる。
卑怯?
こんなにも綺麗な涙を流すアレンが?
俺はつかさず「どうして?」と問いた。
「自分だけ幸せを手に入れようとしてるから。」
正直・・・ここまで素直で純粋な人間見たことがない。
本当に愛しいと思った。
今は亡き養父の事を思い、自らを戒め、罪を認め。
震えながら告白するアレンに、俺は俺の思った事を言った。
アレンは幸せになるべきだ。
心からそう思ったから。
人は幸せになるために生まれた。
だから卑怯になったっていいのだと。
養父はアレンの不幸を望んではいないのだと。
「ラビ・・・」
アレンはそんな俺の話を静かに聞いてくれていた。
そして小さく俺の名を呼ぶ。
その声はあまりに頼りない。
涙を拭き、微笑むアレンに・・・感情は抑えきれなくなった。
どうしても手に入れたい・・・この少年を。
そう考えがまとまってしまってからは冷静だった。
微かな緊張で乾いた喉を潤し、アレンを見据える。
「俺が・・・アレンの事好きだって言ったらどうするさ?」
言葉にしてしまった想いはどうしようもなかった。
そんな自分に苦笑しながらも、驚くアレンを胸の中に収める。
「アレンの事が好きだ。」
もう一度ゆっくりと言葉を口にした。
結果はわかってる。
ほら・・・アレンは泣いてるさ。
そして困ってる。
俺はこれ以上アレンを困らせたくなかったから涙を拭ってやりながらアレンを解放した。
そしてアレンに気づかせるために俺にとっては最も辛い一言を付け足してやる。
「ユウの事・・・好きなんだろ?」
多分その一言で自覚したんだろう。
アレンは俺に謝りまくってた。
でも、どうしてだろう・・・妙にすっきりした気分だ。
『俺・・・どうしてこんなに穏やかでいられるんだろ・・・』
そう疑問に思っていたのはどうやらアレンも同じだったみたいで。
どうして自分の幸せよりも他人の幸せを願えるのかと聞いてきた。
暫くどうしてなのかと考えて、ふとアレンの養父の話を思い出した。
そして自覚した。あぁ、俺もアレンの養父と同じ気持ちなんだって。
「俺だって幸せになりたい。でもそれ以上にアレンが幸せである方が嬉しいんさ。」
本当にアレンが好きだった。
でも、そのアレンはユウを好きで。
それでも、アレンが幸せであるならそれでいいと納得している自分がいる。
その理由は俺にもわからない。
「ラビ・・・ありがと。」
「いいんさ。気にすんな。」
「ラビの事大好きですよ!」
「ユウの次にだろ〜?でも・・・ありがとな。」
自分でも情けないくらい嬉しそうな顔してたと思う。
その後アレンの部屋でて、自分の部屋戻った。
結構遅くなったみたいで、部屋は薄暗い。
片目が眼帯なので、いつもなら明かりをつけるんだけど、そんな事忘れてた。
「はぁ・・・キツ〜・・・」
ドアを閉めて、その後ズルズルと滑り落ちる。
アレンが幸せであればいいと思ったのは事実だ。
しかし、ここまで他人に興味をしめしたのは初めてなわけで。
「ははっ・・・参ったさ・・・」
とう昔に枯れ果てたと思っていた涙が止まらなかった。
片手で顔を覆い、上を向き何とかやりすごそうとする。
「アレン・・・・」
俺の分まで、幸せになって。
俺のアレンを好きだった分まで、ユウを好きでいて。
それが俺の幸せだから・・・・・・
まだ終わってませんっ!もう一度ポチっで続きです〜