□The fortune that God gave...
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……アイツを初めて見たのは、夜の繁華街。
大分夜も更けた頃。
街の活力はこの時間帯が一番栄えていて、レッドやイエロー、ピンクなどといった色とりどりな光が絶え間なく光り輝いている。
明日香を失い生きる希望なんてモノもとっくに失ってしまったオレは、時折美女に声でもかけながらただ当てもなくそんな夜の街をうろついていた。
その時。
視界の隅に、鮮やかな赤い髪を捉えた。
その髪がとても綺麗で、印象的で。
その髪の主にピントを合わせると、よく見えなかったがやはり絶世の美女だった。
今日は女運が良いなと感心しながら、ほぼ反射的に声を掛ける。
「そこのか〜のじょ。可愛いね。ねぇねぇ、今からオレと遊ばない?」
美女が振り向く。
…オレは、固まった。
計算されつくしたかのように整った色白な顔に、鋭い目つき。
容姿は完璧な飾り物のようで、今まで見たこともないような美しさに、思わず頭が真っ白になってしまう。
一目惚れだった。
しばらく見とれていたが、その美女の驚くべき台詞により意識を取り戻した。
「…何か用か?それから俺は男だ、勘違いするな」
…………おとこ?
確かにスカートではなくズボンを穿いているし、よく見ると胸も全く無い。
「ま、マジかよ……」
「男に見えなくて悪かったな」
心なしか、男は不機嫌になっていた。
………それより。
オレは、男に…惚れてしまったのか?
…まさか…な。
女好きで有名なこのオレが、そんなことある訳がない。
気のせいに決まってる。そうだ、気のせいだ。
だが、コイツには何か特別な雰囲気が漂っていて、それがすごく気になった。
普通じゃない、何か。
そしてその「何か」がオレと似ている気がして。
名前を、訊いた。
単純に、訊きたかった。
「お前…さ、名前は?」
男は何の感情も籠もってない瞳でしばらくオレを見つめる。
少し躊躇ってから、ふいとオレに背を向けて、答えた。
「藤宮 蘭だ」
言い終えるなり、男は去ってしまった。
「…そっか」
再びざわめきを取り戻した街の中、小さく呟いた。
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