幻想 -慈み合い−
□クリスマス
2ページ/5ページ
「あ、ひろみさん。この後場所変えて飲み直すんですけど、一緒にどうですか?」
クリスマスパーティーという名の飲み会が、開いた後。
各々が場所を替えるために散らばっていく中。
すっかり潰れているあの子の親友を抱えたまま、まゆが声をかけてくる。
「ありがとう。でも今日は帰るよ。」
決して待っている訳じゃないけど。
期待してる訳じゃないけど。
なんとなく、帰ろうって思った。
「わかりました。気をつけてくださいね。あいつによろしく!」
この後会うと思ったんだろうまゆのとびきりの笑顔に。
下級生にまで、心配されるほど態度に出ていたのかと、少し反省してしまう。
笑顔を返しながらもちょっと自己嫌悪に陥ってると、ひめが近づいてきた。
「どしたの、変な顔して。」
「変なって。失礼だな。・・・。私寂しそう?」
「何言ってんの?」
「寂しそうに見えるのかな。」
「どうだろ。私は別にそうは思わないけれど。ひろみがそう感じるなら、きっとそうなんじゃない?」
「どうして、そう見えるんだろう。」
「ま、普通に考えたら、組が離れてしまって、きっと寂しいだろう。って思うだろうし。
今日みたいな日は、会えないのって結構きついしね。で、傍から見たらそう見えるってことじゃないかな。」
「そか・・。」
「なに?誰かに何か言われた?」
「え。ううん。ちがう。周りに心配掛けてたりするのかなってちょっと思ったの。」
「まあね。私は心配してあげてるわよ?かわいいかわいい、ひろみちゃんが泣いてないかなって毎日心配で・・・。」
「ってもういいから。帰る。」
「あ、飲みなおさないの?」
行きかけた私の背中に声を掛けてくれるんだけど。
軽く片手を挙げて、バイバイと手を振る。
「気をつけろよ〜。」
.