夢想 −偲び合い−
□甘い恋 10題
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1章:指先から恋が始まる
今回の公演では、ゆみこさんと手をつなぐ場面がある。
それは、いいんだけれど。
だって、ダンスの振りや、演技で手をつないだり、腕を組んだりということは、よくあることだから。
でも、困るのは、一度舞台が暗転した後、はける途中で、転びそうになった私を抱きとめてくれるという出来事があった。
それ以降、私を気づかってだろう。
毎日、毎公演はけるときに私の手を握り締めてくれるようになったということだ。
毎日、舞台上でといえども、振りでもないのに、私の手を握り締めてにっこりほほ笑みをくれて、手を引いてくれる。
初めて、手を握られたときは、心臓が飛び出るかと思うくらいびっくりした。
でも、暗闇でほほ笑みながら、手を引いてくれたゆみこさんの暖かさに気を取られてしまって気がついたら、
そのまま袖まで手をつないだままにしてしまっていた。
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