幻想 -慈み合い−
□匂い
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「ひろみさん、目を瞑ってみてください。」
「どうして?」
「いいから。」
づっくんと二人で、公演のあとご飯を食べに行って。
その帰り、明日は休演日でしょ?というよくわからない言い訳で私を自分の部屋に連れてきたづっくん。
驚いたことに、づっくんの部屋は、前来たときと様子が違っていた。
なにが違うのかよくわからないんだけど、でも、なんだか、慣れ親しんだ空気感を感じる部屋になっていた。
頭をひねりながらも、とりあえず、ソファに腰掛けたら。
すかさずマグカップを渡してくれて。
温かい飲み物で、少しほっこりして。
そのまま、並んで腰掛けたまま、たわいもない話をしていたんだけれど。
突然。
「ひろみさん、目を瞑ってみてください。」
とづっくんが言い出した。
「どうして?」
「いいから。」
仕方なく、言われるままに目を瞑る。
「ねえ?なんか感じません?」
人一人分置いて座っていたはずのづっくんが、いつの間にかすぐそばに腰掛けていて。
耳元に囁きながら息を吹きかけてくる。
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