幻想 -慈み合い−
□腕時計
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「ちえさん。ペアのものを持つのってどう思います?」
「そりゃ、恋人同士やったら別に普通ちゃうのん?」
「じゃあ、恋人じゃなかったら?」
「めっちゃ仲がいいとか。だって、同期で同じTシャツ着たりするやん。ここではそんなんたいしたことちゃうやろ?」
公演が終わって、休憩室で、軽く食事を取りながら、目の前にいた上級生に質問を投げかけてみたが。
どうしても、しっくりこない・・・。
「同期ならわかりますよ。それとか、おなじ公演のメンバーだった記念とか。でも、組も違う。学年も違う。そんな二人がペアのもの持ってるって・・・。」
「なんや。そりゃ付き合ってるんやろ?誰?誰?そんな生徒いてたん?」
「・・・・ひろみさん。」
飲みかけていた、コップを口に持っていく寸前で、ビックリしたように、手を止めたちえさんは、大きく目を見開いて、私を凝視する。
「何?のろけやったん?ひろみとおそろいのもの買ったんですー!って自慢?」
普通はそう思うよね。
私たちが付き合ってることを知ってる人間なら、そう思って当然ですが。
「違います。ひろみさん、最近いつもしてる腕時計があるんです。」
「・・・・。」
「それが、この間、たまたま見た雑誌で・・・。」
「雑誌で?」
「ゆうひさんがしてました。」
「ゆうひさん?ゆうひさんが持ってたん?偶然じゃないん?」
「同じヤツでした。でも、そのときは偶然だと思ってたんです。でも、これ・・・。」
かばんから、グラフを取り出して、ちえさんに見せる。
ぱらぱらと中身をめくったちえさんは、あるページで手を止め・・・・。
「いや。まあ。ひろみとゆうひさんは、昔から仲良しやし、そんなに気にする必要ないんちゃう?別に上手く行ってないわけちゃうんやろ?あいかわらずラブラブなんやろ?」
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