幻想 -慈み合い−
□思わぬ敵
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「おつかれさまで〜す!」
元気な声とともに、花組下級生たちが大部屋に入っていったのがわかった。
しばらくしたら、こっちもうるさくなるな。
今のうちに準備しとこう。
そう思って、早速化粧を始めたのに・・・。
「おつかれさまです!」
鏡越しに、見えた顔に愕然とする。
「えりたん・・・。また来たの?」
鏡に映った顔は、言わずと知れた、生意気な下級生だった。
「またってなんなん?うちは、まゆに会いに来たの!別にゆーひさんに会いにきたんと違うもん。」
ちょっとふてくされた振りをしたって、だめだから。
まゆに会いに来たわりには、どうして、私の隣に腰を下ろしてるかな・・・。
「じゃあ、なんで、ここに座ってるわけ?まゆの隣に座ればいいじゃない。」
化粧を再開しながら、鏡越しに睨みつけるんだけど。
もちろん、効果がないのはわかっている。
「ええやん。別に。まゆ今いてへんねんし。」
にやにや笑いながら、鏡越しに私の化粧をしている様子を覗き込むんだけれど。
気が散るからやめてほしい。
「まゆならもうすぐ戻ってくるよ。だから、あっち行け!」
しっしっ!と手でジェスチャーするんだけれど。
もちろん、こいつに通用するわけがない。
「まあまあ、まゆが戻ってきたら、あっち行くし。ちょっとくらい相手してくれたっていいやん。」
ちょっとならね。
でも、あんたはずっと話続けるでしょ?
私の準備が遅れたら、誰が責任取ってくれるわけ?
言いたいことはいっぱいあったんだけれど。
ここは、花組の楽屋なわけではないから、兄弟喧嘩をするわけにもいかない。
とりあえずぐっと堪えて、化粧を再開する。
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