幻想 -慈み合い−

□思わぬ敵
1ページ/6ページ





「おつかれさまで〜す!」





元気な声とともに、花組下級生たちが大部屋に入っていったのがわかった。


しばらくしたら、こっちもうるさくなるな。


今のうちに準備しとこう。


そう思って、早速化粧を始めたのに・・・。





「おつかれさまです!」





鏡越しに、見えた顔に愕然とする。





「えりたん・・・。また来たの?」





鏡に映った顔は、言わずと知れた、生意気な下級生だった。





「またってなんなん?うちは、まゆに会いに来たの!別にゆーひさんに会いにきたんと違うもん。」





ちょっとふてくされた振りをしたって、だめだから。


まゆに会いに来たわりには、どうして、私の隣に腰を下ろしてるかな・・・。





「じゃあ、なんで、ここに座ってるわけ?まゆの隣に座ればいいじゃない。」





化粧を再開しながら、鏡越しに睨みつけるんだけど。


もちろん、効果がないのはわかっている。





「ええやん。別に。まゆ今いてへんねんし。」





にやにや笑いながら、鏡越しに私の化粧をしている様子を覗き込むんだけれど。


気が散るからやめてほしい。





「まゆならもうすぐ戻ってくるよ。だから、あっち行け!」





しっしっ!と手でジェスチャーするんだけれど。


もちろん、こいつに通用するわけがない。





「まあまあ、まゆが戻ってきたら、あっち行くし。ちょっとくらい相手してくれたっていいやん。」





ちょっとならね。


でも、あんたはずっと話続けるでしょ?


私の準備が遅れたら、誰が責任取ってくれるわけ?


言いたいことはいっぱいあったんだけれど。


ここは、花組の楽屋なわけではないから、兄弟喧嘩をするわけにもいかない。


とりあえずぐっと堪えて、化粧を再開する。





.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ