夢想 −褒め合い−

□甘い誘惑の罠
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「彩那先輩。」





後ろから声をかけられて、振り向くと、すらりとした男前が立っていた。


足元から頭の先までじっくり見定めるように目線を移して行くのだが、本人はいたって平気のようで、しれっとしている。





「なに?」





とげのある声になった自覚はある。


でもそれは自分が悪いのではない。


こいつが悪いのだ。





「やっぱり、怒ってますよね。」


「・・・・・。」


「そんなに怒んないでくださいよ。」





にっこりと微笑まれて、思わず胸倉をつかんでしまう。





「お前!おこんなってほうが無理だろ!自分が何したかわかってんのかよ。」


「ええ。大好きな彩那さんが目の前で無防備に眠っていたので、思わず襲ってしまいました。」


「おまっ!!」


「でも、それは僕が悪いわけじゃないと思います。常々、彩那さんには好きですって言ってましたよね。」


「・・・。」


「なのに、僕の前であんな無防備な姿を見せる彩那さんの方が悪いと思いますよ。」






俺より幾分背の高いかなめの胸倉を掴んだところで、遊んでいるようにしか見えないのはわかっていたけれど、我慢が出来なくて、思わず、揺さぶってしまう。





「我慢しろ。っていうか、勝手に襲うな。手を出すな。ってか!キスするな!!」





思わず大声でどなりそうになって慌ててぼそぼそと声を潜める。









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