幻想 −紡ぎ合い−
□愛情比較
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「ずばり聞きますけれど、私とゆうひさんのどちらがいいですか。」
テーブルの上におもむろに置かれた2枚の写真。
同じ衣装。
同じ役。
ただ、映ってる人が違うだけ。
ゆうひさんとりか。
今度再演されるミュージカルのスチール取りが先日行われたらしく。
早々にもって帰ってきた自分の写真とどこから手に入れてきたのかゆうひさんの写真。
その2枚を広げて聞いてくる。
えっと。
「それは、見た目ってこと?」
「当たり前です。まだ公演が始まったわけじゃないんですから、私がどんな役作りをするかなんて私自身にもわからないですし・・。」
いや、じゃあ、なんでこんな無意味な質問するかな・・・、って思うんだけれど。
づっくんが言うには、今回の役が決まったときから、かなりの対抗意識を燃やしていたらしい。
でも、私は、そんなことしても本当に意味がないと思うんだけれど。
言ってもりかとゆうひさんでは圧倒的にキャリアが違うし。
なにより、持ち味が違う。
ということは、自然と全然別のキャラクターになるということで。
逆に同じ役作りだったら、おかしいことになるに違いなく。
そんなことに頭を悩ましているりかの気が知れないのだけれど。
そういうと、づっくんに、窘められてしまった。
曰く、相手がゆうひさんだからなのだそうで。
どうやら、いまだに私とゆうひさんの仲を勘ぐっているそぶりを見せるりかは、気になって仕方がないらしい。
ということで、心優しい私はこの場を無事にかいくぐる為にも模範的な回答をすることにした。
「悩むまでもなく、りかだよ?」
にっこりと微笑みつきでそう答えると。
とってもうれしそうな笑顔のりかと目が合う。
「よかった〜。」
そういいながら、撮影の時どれだけ大変だったかを一生懸命話してくれるんだけれど。
心の中では、ゆうひさんごめんなさい・・・。そう呟いていた。
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