幻想 −馴れ合い−
□一筋の涙
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客席にいるあの子の瞳から一筋の涙がこぼれる。
昨日、あれだけ言ったのに。
だから、来なくてもいいって言ったのに。
『最後の公演なんだもん。明日を逃したら見に行けないんだもん。絶対行く!』
そう言って譲らなかったあの子。
『せやったら、約束して。絶対泣かへんって。お前が客席で泣いてもうたら、舞台勤め上げる自信がないねん。』
ちょっと斜めに目線を逸らせながら言った私の言葉に、一瞬唖然とした表情をしながら。
その瞬間。
爆笑して。
『何言ってんの。泣いたりしませんよ。それに、もし私が泣いたとしても、とーこさんが舞台を疎かにする訳ないでしょ?ぜったいやりきっちゃうでしょ?』
笑いながら、なに言ってんだか・・。って顔してるけど。
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