幻想 −馴れ合い−
□騙しきればそれが真実
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チャイムがなった。
玄関を開けた瞬間、すごく不機嫌なあさこが挨拶もせずに入ってきた。
何・・・怒ってるんだろう。
すごく機嫌が悪いのがわかる。
眉間に皺がね・・・。
あったし・・・。
でも、機嫌が悪いからって、私に八つ当たりしないでほしいんだけど。
「いらっしゃい。」
無言でずかずかと入ってきたあさこは、リビングにあるソファにどかっと座って、テレビのリモコンをピコピコと押してチャンネルを変えている。
「いらっしゃい。」
もう一度あさこに声をかける。
ちろりと、私を見たあさこは、テレビをピッと消して、リモコンをぽいっと投げる。
人の家のリモコンを投げるなよ・・・。
公演終了後そのまま来たんだろう。
洗いさらしの髪がまた一段とあさこを男前にしていて、そういえば、最近お風呂上りのあさこを見る機会ってないんだなと、組替えを改めて実感する。
「ご機嫌だね。」
無表情に、長い前髪の間からちろりと私を見上げて。
にやりと口角を軽く嫌味に上げたあさこが、私に言いすてる。
相変わらず唐突な話口調。
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