夢想 −過去拍手−
□囚われた瞳
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初めて見たのは、早朝のお稽古場でだったと思う。
それも、とても下級生だった頃。
あの人も、私もまだまだとっても下級生で。
朝早くから自主練をしようと空き教室を探している時だったはず。
私よりも早くに来てお稽古している人がいると思ったら、それが、彼女だった。
無心に曲にあわせて、ダンスしている姿。
思わず、見とれてしまったのを思い出す。
そう、思えばあの時から、あの瞬間から、あなたに囚われていたんだと思う。
一目ぼれというのかもしれない。
あの瞬間から、あなたが私の中心になった。
だから、いつも、いつも、月組のお稽古場をよく覗いた。
まるで、同期に会いに来たようなそぶりをしながら。
同期と話をしながら、目線はその先にいるあなたにいつも向いていた。
教室の片隅で、うずくまって何かしている時もあった。
タオルで汗を拭っている時もあった。
誰かと談笑しているときもあったし、爆笑しているときもあった。
あれから、もう、何年もたって。
気がつけば、私も彼女もそれなりの学年になっていて、そして、幸運にもあなたと私は同じ組になった。
でも、不幸だったのは、あなたが私を見てくれないということだった。
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