幻想 −秘め合い−

□能面の笑顔
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いつも笑っているひろみさんが今日は、まったく笑っていなかった。


公演中には気がつかなかった。


といっても、公演中はすれ違うときさえあまりなかったのだから、当たり前かもしれないが。


公演終了後、組全体のミーティングがあるということで、それまで時間をつぶさなくてはいけなくなり、


大半の生徒は、食堂に集まってきていた。


私ももちろん、準備を済ませて余った時間を潰そうと、食堂に来たのだが、


そこで見つけたひろみさんが、めずらしく笑っていなかったので、びっくりしたのだ。


別に、いつでも笑っているわけではないけれど、大抵の場合、笑っているか微笑んでいるか、


柔和な顔つきでいるひろみさんが、今日は、無表情で座っていた。


それも、一人で。






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