幻想 −馴れ合い−
□怒りの矛先
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「テル・・・。いいかげん落ち着いた?」
きつくきつくひろみさんを抱きしめ続けていたら、呟くように静かに、冷静な声が私の腕の中から聞こえてきた。
どうしてそんなに、冷静な声で私に話しかけるんだろう。
ついこの間まで、とっても愛し合っていたと思うのに。
そのときは、とても熱い声で私に話しかけてくれていたのに。
どうして、今は、こんなに冷静な、冷酷な声で私を呼ぶんだろう。
その冷たい声に、これ以上抱きしめていてはいけないんだということを悟ってしまう。
そっとそっと腕を外す。
そのまま、そっと一歩後ろに下がる。
「テル。なんだか・・・久しぶりだね。」
笑顔はいつものそれなんだけれど。
話し口調が冷たく感じてしまう。
「ひろみさん・・・。」
「なんだか、さっきから、私の名前しか呼んでないよ?」
小首をかしげて、上目遣いに見つめてくる。
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