幻想 −紡ぎ合い−

□時と場所
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「あれ?ひろみ?どうしたの?」


「あ、まさこ。ゆうひさんは?」


「ん?えっと・・どこだろ・・?あ、いた、ちょっと待ってて。」





どうしても、会いたくなって、つい、お稽古場まで来てしまった。


まさこがいてよかった。


そう思ってると、ゆうひさんがまさこに呼び出されて、こちらに来てくれた。





「ひろみ。どうした?」





教室から出てきてくれたゆうひさんを見た瞬間。


そこが、宙のお稽古中の教室のまん前だとか。


奥の教室が雪組の稽古場だから、廊下にはもちろん、雪組生が溢れてるとか。


そういうことを、その瞬間、頭から飛んでしまって。


がばっと抱きついてしまった。


突然のその行動にも慌てずしっかりと抱きしめてくれるゆうひさん。





「ひろみどうしたの?」


「やっぱり・・・・。みれないと思ったら・・・・。我慢できなくなって・・・。思わず来てしまいました。」





まったく要領を得ない言葉だった。


自分でもすごく、わかってたんだけれど。


でもゆうひさんは、そんな私の言葉をちゃんと理解してくれたようで。





「ああ、そうだねぇ。どっかぶりだもんね。でも、東京公演は観に来てくれるでしょ?」





抱きついたまま、うんうんと頷く私。






「だから、そんなに泣かないの。ほら。せっかくのかわいい顔が台無しだよ?」





そう言いながら、そっと涙をふきとってくれるゆうひさんの笑顔に、泣きながらも笑顔をつくる。





「公演がんばってくださいね。地方のお土産送りますから。」


「あははっ。うん。ありがとう。いつもどうりだけど。でも頑張るね。お土産もたのしみにしてるよ?」





見つめあい。


微笑みあい。


ほっこりしている自分に気がつく。


さっきまで、寂しくて、悲しくて、辛かった気持ちが嘘のようになくなっている。


抱きついていた体を離して、でも、両手はつないだまま。


見詰め合って。





「いってらっしゃい。」




早いけれど、先に言っておく。


初日まであと1週間。


きっとまた当分会えないだろうけれど、ゆうひさんも頑張ってる。


だから私も頑張る!


そう思いながら、握った両手をぶんぶん振る。










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