短編
□多分、それ私です
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ふと聞き馴れない声にいつもは無視するのだが思わず振り返るとそこには、ええと…ああそうだ山野だ。山野がいた。
「何」
「山崎さ、や、あの…っ」
なんだろう。
特に急ぐことでないならもう去ってもいいだろうか。
何か重要なことなのかソワソワと落ち着きもない。なんだと急かすと辺りを見渡したりして、いかにも怪しい行動だ。
「…あの尾形さんて、」
くっと声を縮めてよく聞こえるようにこちらに近く。
「…女の人よく連れてきますよね?」
ああ、女の人……女の人?
いやいやそんなん知らんで。何?俊に女?
は、何?
「…え」
どうやら思考回路が可笑しくなったようで上手く言葉が出てこない。
というか俊がその事実を教えてくれなかった事に少し悲しかった。いや、知って何があるって訳でないのだが。
「一昨日から今朝にかけていつも早朝に部屋に入っていくのを見たんです…」
そこでこんがらがっていた一本の糸がピンと一線になる。
一昨日から今朝にかけて…しかも時間帯は早朝。
「着物の色は何?」
「へ?色は…確か、藤紫みたいだったなぁ…」
ああ、やっぱりか。
誤解を解こうと口を開こうとしてやめた。
多分、それ私です
面白いのでしばらく黙っておく。
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仕事で女装した山崎を目撃した山野くんの勘違い
続くと大変な誤解が連鎖しそうですね