短編

□本当のナマエは何処かに消え失せたみたい。
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街中で賑やかな騒めきが悲鳴へと変貌する。気が付けば人々の目線は浅葱色に向いていた。

もう沖田さんの奇行に見慣れてしまったみたいで、俺は慌てもせず「あっ」と間抜けな声を洩らした。

「えへー…ど、どうしよ楠君」

「いや、知らないッスよ。何で笑ってんすか。」

そんな人を斬ったすぐに笑顔向けられても笑えない。
沖田さんの足元にはさっきまで小競り合いになっていた男が転がっている。威勢よく、長州藩士だと名乗っていた奴の顔をまじまじと観察してみるが、真っ赤に染まった顔を見ても俺の記憶の中から同じ顔は出てこない。

まだ生きているようで、うっすらと開いた糸目のような瞳は俺の姿を捉えた。

「…。」

意味は無いがふざけ半分でにやりと笑ってみせると、男は目をこれでもかと見開いた。
…どうやら会ったことはあるみたいだ。覚えてなんかないけど

もう沖田さんは周りの目など気にせず、徐々に集まって来ていた人混みを掻き分けて進んで行ってしまっている。

「…なんだよ」

別に驚きもせず、歩き出そうとした俺の足首を掴んだ男を鬱陶しそうに見下ろした。
振り払おうとしたとき、男の唇がゆっくりと動く

「────、…。」

唇から吐き出されたのは言葉にならない吐息だけだったが、その唇の動きで俺のナマエだと解った

だが、返事はしない

「何言ってんのか、わっかんねぇよ、おっさん。」

俺はそう吐き捨てると刀をズブリと男の喉元目がけて差し込んだ。
なかなかついてこない俺を心配したのか、沖田さんが戻ってくる。


「“楠”君、どうしたの?」


「…いや、何でもないです」


今度の名前には返事をした。




本当のナマエは
何処かに消え失せたみたい。


さて。何処に逝ったんだろうか。
探す気なんて、ないんだけど。


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久しぶりに楠書いてみたら若干迷子になった(・ω・`)

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