短編
□斜交いの人柱
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可哀相に。可哀想に。
だれが可哀想だって?
それは勿論、彼さ。
これは罰。
一方的な罰。
でもそれを彼は逃げずに望んだ。
「介錯は君にして欲しい」
何故断らなかったのだろう。
断ってしまえば、
痛みにうめく彼の声を聞かずに済んだのに
切り落とされた彼の首も見なくて済んだのに
人を殺めるのなんて呼吸するくらいに簡単で瞬きをするくらい一瞬で終わる。
介錯だって同じ事だ。なのに、
「止まらないなぁ…」
拭っても拭っても溢れ出てくる。
「なんだよ、これ」
涙。
悲しみか、同情か、はたまた後悔か理由はわからないけど。
一瞬では終わってくれそうも、無い
可哀相に。可哀想に。
だれが可哀想だって?
それは、僕だった。
斜交いの人柱
歪んだ犠牲がまた一つ。
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山南さん切腹後の沖田さん的な。