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 と海が交わるように水平線に向かっている先で何を考える訳でもなく見つめる。
頬に当たる風は心地好く流れ、雲は身を任すように空に浮かんでいた。
ゆっくりと右から左に流れていく雲を見ていると、地球が本当に丸いのだと再確認させられ静かに感動してしまう。


「指示があるまで自由時間だと」


 海を一望出来る部屋のベランダに備え付けられたチェアに座っていた青木の隣に高瀬が腰を下ろす。折角修学旅行で沖縄まで来たのに台風の接近でマリン体験は中止になり、その分の時間調整で部屋に待機していた所に別室の高瀬が入ってきた。
 本州は秋の涼しさから暖を取りたくなるような冬へと季節が変わりゆく中で、此処沖縄は薄着でもまだまだいける程の気温で安定していて過ごしやすい環境だった。風が強い訳でも、海が荒れている訳でも傍目からでは分からないくらいに穏やかな時間が流れていて、本当に台風が接近しているのか疑いたくなるような天候だ。


(暇、だな…)


 学習目的で来ているため、当然部活もなく強制的に休暇を取らされているため何をやったら良いのか分からない。グローブもバットも無く手持無沙汰な状況にただ意識を無にすることしか出来なかった。

 カシャ、と隣から乾いた音と一緒に光が走った。体は背凭れに寄りかかったままに視線だけで何をしているのかと確認すると、携帯を構えている高瀬と視線がぶつかる。


「俺なんか撮っても楽しくないだろ」
「他にやることねえし」


 確かに無いな、と納得してしまう。互いに野球以外の趣味はほぼ無いに等しく、何をしたら良いのか分からない。テレビを見るにも中途半端な時間なためくだらない内容ばかりで見ていてつまらない。いっそのこと寝てしまおうかと欠伸をしたところでマナーモードにしていた携帯がけたたましく着信を知らせる。
ディスプレイ画面に映った相手の名前を確認してからペアキーを押すと、今暇かと問われた。

「誰?」
「同室の皆川。今暇かって」
「ひーま〜、暇過ぎて腐りそう〜」


 隣で騒ぐ高瀬の声は携帯越しの相手にも伝わったようで、だったら水着持ってプールに来いよと誘われ、二つ返事で答えると電話を切った。




「高瀬ー例のモノは大丈夫なんでしょうね〜?」
「ふはははっ、舐めんなよ亀井!俺を誰だと思ってやがる。褒めろ称えろひざま、」
「SDカード」
 切り捨てるように吐き捨てる亀井に対して、少しは感謝くらいしろよな〜と唇を尖らせて文句を言いながらSDカードを渡すと交換するように数枚のクーポンを渡された高瀬は、満足気に笑うとまいどありと浮かれるようにクラスへと戻っていく。


「亀井」


 背後から声を掛けられた亀井は、予測していたため大して驚くことも無く高瀬と入れ替わるように現れた青木へ先ほど渡されたSDカードを引き渡した。


「大分撮られてるな…。クラス違うのによく此処まで撮れたな準太も」
「食べ放題のクーポンに釣られるエースってどうなのよ青木」
「……言うな。で、これで良いのか?」



例の写真…三千で売れたからな



「まさか自分が売られたとは思わないでしょ〜」
「正当防衛だろ?むしろ他校や後輩に売るお前の方が悪徳」
「私は夢見る女の子に夢を売っているだけよ」





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顔だけは良いのよね


09,10,25


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