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 青緑と色彩豊かなラインが白い平面に走り自己主張をすると昔やった色塗りのように、ただ真っ白だった平面に賑やかさが足されるのに気分は賑やかに何か小指の甘皮ほどにもならない。何が重要で、何を暗記しなければならないのか分からなくなり頭が爆破してしまいそうだ。頭の中に爆破の名人が居るのならダイナマイトでどかんとぶっ放しでくれ。

「あー…もうヤダ。受験なんて無くなれ。死ね。受験考えた奴死ね」
シャーペンを放り投げて、背中を反らすとイスがぎしりと鳴るがお構いなしで背凭れに体重を乗せる。外では楽しそうに騒ぐ子供たちの笑い声が聞こえ、窓からは温かい太陽が降り注ぎ、ベランダに干された洗濯ものが風ではためく。

(気晴らしにどっか行くかなー…)
携帯を開いてアドレス帳から暇そうな奴の名前を探す。ボタンを押す無機質な音が部屋に響き、適当な相手を見つけると「暇」と言うたった二文字の言葉を打ち送信する。

直ぐには返ってこないだろうと思い携帯をベッドへ投げた次の瞬間、買った時から弄っていない初期設定のメール受信音が鳴り響く。予想外な展開に驚き寄り掛かっていた椅子からずり落ちた自分を誰が見ているでも無いのに羞恥心がこみ上げる。

『だから』
受信メールを確認して思わず携帯に突っ込んでしまった。本日二度目の羞恥心。
いやいや…、構ってくれるような内容を期待した訳では無いが幾らこれでは酷過ぎる。もう一度アドレス帳を開き、同じ相手を見つけると電話を掛ける。

「ちょっと呂佳さん…!どういうことっすか?!」
「どういうも糞もねえよ。そのまんまの意味だろうが」
受験生なんだから受験勉強してろ、と"受験生"を少し笑いを含まれて強調されれば癇に障ると言うもの。どうにかして構ってもらおうと日曜日の約束を取り付ける。



ワリィ、日曜はサザエさん見るから無理だわ



「呂佳さんサザエさん何て見てないじゃないっすか!」
「バカ野郎。笑点の後はちびまるサザエを見るのが日本国民の常識だろ」
「この間はテレ東でやってる釣り番組観てたくせに!」
「それはお前先週が偶々俺の好きなカワハギだったからだ」
「そんなの知らねえし!つかテレビくらい録画すれば良いじゃないっすかあ」





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贔屓は小遊三師匠


09,11,09



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