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□req02
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 しい匂いで満たされた鼻孔に連動するように胃から悲痛な叫びが聞こえ、早くその欲求に答えてやるためにと空席に座る。

 体に比べると低い位置にあるテーブルに先ほど食堂で買ったラーメンを置くと、すぐさま頂きますと声を掛け、口に運ぶと湯気が鼻に入り鼻水が出てくる。鼻を啜る音と麺を啜る音を交互に鳴らしながら夢中になって食べていると、テーブルを挟んで向かい側にいる政宗から笑いを堪えるようなくぐもった声が聞こ えた。


「何が可笑しいんだよ」


 麺を啜りながら目線だけ政宗に向けて話かけると、盛大に息を噴き出したかと思ったら、腹を抱えてテーブルに蹲ってしまった。昼休憩もまだ時間はたっぷりとあるが、麺がのびてしまってからでは美味しくないからと熱いうちに食べているのに、目の前の男はそんなこともお構いなしで額をテーブルにくっ付けて 肩を震わせたままでいる。


「いい加減に止めないと流石に怒るぞ」
「Ah〜,sorry.あまりにも必死に食うもんだから」


 体はテーブルに倒したままで顔だけ上げた政宗は、目尻に涙を浮かべ口元は笑ったままで謝る敬意が微塵も感じられない。しかし、笑うことで高揚した顔はほんのり色が付いていて、元親の鼓動を跳ねさせた。


「どうしたよ、元親。いきなり動かなくなって」


 ラーメンでも詰まらせたか、と目の前で手を振り元親の安否を確認する政宗だったが、何も反応を返さない元親が心配になり無理やり腕を掴み、引き摺るようにして食堂を出た。


「何があった」


 政宗が元親を引き摺るようにして連れてきたのは人気のない校舎裏。さわさわと葉が擦れ合う音、時折聞こえる鳥の囀り、校内から聞こえる生徒の声も何処か遠くに感じる静かなこの場所で元親は自分の上履きの先を見つめていた。


(何時からだろうか)


 何時から政宗に友情以上の感情を抱くようになったのだろうか。少し前まではふざけて抱き合ったり、肩を組んだりすることに何の感情も湧かなかったのに、何時の日か同性者に対して抱いてはいけない感情を覚えてから必要以上に政宗に触れることを止めた。

 触るなと思う悲願と触ってほしいと思う欲望の渦に飲み込まれて頭が痛い。政宗が好きだと叫べたらどんなに楽だろう。このもどかしい友情ごっこも終わらせることが出来るのだろうか。思うことは容易くて、言葉にするには難しくてどうにかなってしまいそうな気持ちを吐き捨てることは出来なくて、何事もなかったようにお前に笑顔を向けて、親友の仮面を被り続ける。





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Happy birthday dear Yanagawa…!
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