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□event
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 休憩中ずっと屋上を占拠することに成功した本山と山ノ井は、満足そうに額に浮かぶ汗を腕で拭うと振り返り巻き込んだ青木と前川に感謝の言葉を述べるとじゃまた部活で、と爽やかにその場を去って行った。

 最後の任務を無事完了した2人は、これで世の浮かれあがった奴らに罰を下すことが出来たのだな、と嬉しそうに放課後の部活のため部室への道を歩んでいた。すると、大きく膨れたエナメルバッグを重そうに歩く河合の姿に気がついた本山は、軽く駆け足で近寄ると河合に挨拶をした。
「おっ、本やん。準太に報復されたんだって?」
「何だよー、準太チくったの?本当あの子再教育すべきよお母さん。」
誰がお母さんだよ、と軽く突っ込み肩に掛かるエナメルを背負い直すと数歩後ろに居た山ノ井の存在に気がついた河合は、眉間に皺を寄せる山ノ井の形相に一瞬怯みどうしたのかと問うた。
「……和己さー、まさかその中身大半がチョコ何て言わないよね?」
「ん?あー当たりだよ。よく分かったな〜山ちゃん。全部入れるのに手間取ったよ。」
準太とか利央みたいな奴らが貰えるのは分かるが、まさか今年になってこんなに貰えるとは思ってなかったから参ったよ、と頭を掻きながら照れくさそうにはにかむ河合に対して、先ほどまで河合の肩に腕を絡ませていた本山は、顔を引くつかせながら一歩、また一歩と後退していった。そんな行動に何か不味いことでも言ったか、と思いどうしたのかと本山に手を伸ばすと絶叫され、物凄い勢いで本山と山ノ井は河合から3メートルほど離れていった。
「お、おい…本も山ちゃんもなんだって、」
「河合和己君、僕たちに半径3メートル以内に近づかないでください。」
「不潔よ、…不潔だわ和己君!まさかあなたから裏切ってくれやがるなんて圭ちゃん泣いちゃう!」
お互いの手を取り合っておぞましいものでも見るような目つきで河合を見つめる2人に対してどうしたものかと悩んだ河合は、ぴんと2人の行動の意味を理解した。
「あ、分かった。2人共チョコ貰ってないんだろ!だったら先にい、」
「チョコが欲しいなんて思ってないんだからなああああああ!!」



裏切り者には制裁を!




「雅やんは寡黙だからチョコなんて甘い行事の代物貰ってなんかいないよな…?」
「無口な男にはチョコなんてくれるような女子なんて居ないよね?」
「和己との話聞いてると、俺もお前らから3メートル離れなきゃだな。」
沈黙する本山と山ノ井の前で、先ほど部活に来る途中の廊下で渡されたチョコを出すとみるみる顔を青ざめていく2人の姿が部室にあった。





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見落としていたブラックホース



09,02,18


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