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□event
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の冷え込みも薄れ暖かい風が春の訪れを告げる2月中旬、野球部部室を使っての怪しげな会議が此処桐青高校で開催されていた。長机に頭を突き合わせ、2つの影が落ちている下には資料らしき紙の束があった。それらを読み終えると一人の男がもう一人の男に呼びかけた。
「具体的行いは資料を読み、自分の任務を速やかに実行することだ。分かったかね祐史君。」
「相分かった。解散と同時に配置に着こうではないかね、圭輔君。」
お互いの目を見てコンタクトを取るとパイプ椅子から音をたてて立ち上がった。資料を片手に部屋を出て行く男達の肩には力が入り、一呼吸いれると部屋を後にした。



 一年に一度のイベントである”バレンタイン”。大好きな彼にあげようと前日に一生懸命想いを込めて作る本命、それを悟れられないよう、または、日頃の感謝などから作った義理、仲良しの友人たちにと作った友チョコと共に登校してくる女子生徒、そんな中平静な顔して今年こそはと淡い想いを抱いて登校してくる男子生徒とそれぞれの思いを胸に今日という日を迎えていた。そして、此処にもこの日を楽しみにやってきた長身の男が校門を通っていた。
「あらあら仲沢さんちの利央くん。今日は一段と締まりのない顔をしていますね〜。」
「っはざいます!…本さんは嬉しくないんですか!?バレンタインすよ、バレンタイン!!ただでチョコ貰えるなんて嬉しいじゃないですかー。」
「憎いねー!何、チョコを貰える絶対的保障あんの?」
ありまくりっすよ、と自信満々に前日のことを話してくれる利央の話によると、クラスの者から先輩、後輩と学年問わず女子のものから明日あげるねということを事前に教えてもらっていたらしい。これで何日間かはお菓子買わずに済みますよ、とにこにこ語る利央を口角を引くつかせながら聞いていた本山は精々貰えると良いな、という一言と肩を1度叩くと下駄箱前で2人は別れた。

「本さん早起き出来るんだー…。っと、今年は何個あるかな〜ふひひ。」
先輩に対して失礼な事を口走りながらも今年の収穫はどんなものかと言う期待を胸に下駄箱へ向かった。去年は下駄箱に5つ、朝の机の上には10個位はあったかなと緩む頬をそのままに下駄箱を開けた。
「…………これ、俺のだよね?えー…うん、名前書いてある。おっかしいな〜今年はもっとあると思ったのになーちぇ〜。」
開けた下駄箱には、上段に上履きがぽつりと寂しくあるだけで目当てのチョコレートの箱は見当たらなかった。まあ、そんなこともあるか、とローファーを脱ぎ、上履きに履き替えて教室の上のものに思いを馳せた。



全軍突撃準備 チョコを買い占めろ 皆平等だ



「おっ、本やんおっつ〜。作戦成功したよー。」
「マジあのパツキン世の中のモテないメンズのために排除すべきだな」
「あらま〜ご立腹!…でもこの山のように積み上げられたチョコみたら納得だわ。」






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(餌付けのために)利央に渡されたチョコを回収にまわる3-4コンビ




09,02,14


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