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合達3年生が引退して迎えたクリスマス。
去年の今頃は、主将や副主将が新しくなったばかりでまだ落ち着きのない野球部だったが、今年は不幸なのか幸いなのか早くの引退で、新生チームも早くに馴染み今では大分落ち着いていた。
そのため今年のクリスマスは、あまり浮足立つ部員も無く静かに聖誕祭を迎えることが出来た。

去年は引き継ぎにかなりの時間が掛った上に、すぐに気持ちの切り替えのできない者ばかりで部内で小さい喧嘩もしばしばあった。
しかし、今年は予定よりも大幅にズレての引退によって、逆にそれぞれ思うところがあったのか負けたことへの屈辱を晴らそうとする意気込みで部内が一致団結するまでに時間は掛からなかった。

監督も、部員たちの雰囲気を察知したのかクリスマス当日は午前部活のみで、午後は丸々オフとなった。
監督の心意気に乗らない手は無いと言わんばかりに、部活終了の号令が掛ったと同時に部員達は素早くグラ整を行い帰り支度へ取りかかった。






部室に戻ったら、エナメルの奥底に埋まっていた携帯を探し出したら、アドレス帳から目当ての名前を見つけ電話を掛けると2コールめには相手に繋がった。
「もしもし、本やん先輩っすか」
『おっ、どうした準太?お前が俺に電話なんて珍しいな』
「ちょっち頼みたい事がありまして…」



携帯越しで声が消えた先輩に、どうしたものかと声を掛けるとゴンと言う鈍い音の後に、小さく痛っと呻く声が聞きとれた。
もう一度大丈夫かと問うと、うん大丈夫。と返事が返ってきた。



『本当にさ〜可愛い言い方すんなエース。…んで、頼み事って?』
「今年も先輩独り身ですよね?そんなクリスマスにオンリーな先輩に雪を降して貰いたくて」
『喧嘩売ってるのか?え?どうせ俺は1人ぼっちクリスマスだよ。世の恋人達を呪ってたら去年思わず雪降らしすぎて電車止めちまったよ』



ぶつぶつと小さい声で呪文のように唱えられている世の恋人達への不平不満があまりにも怖くなり、思わず耳から離して通話ボタンを切りそうになった。
しかし、それでは電話した意味が無くなるので、今だにしゃべり続ける先輩を無理やり止めて、もう一度頼んでみた。



「25日の深夜零時にメールするんで当日ホワイトクリスマスにして下さいよ」
『それ最早クリスマス終わった後だよね?何それイジメ?放置の上に焦らしプレイですか?』
「先輩のことはどうでも良いんで、俺と毅彦、そして世の恋人達のために降らし下さいよ」
『よし、分かった。その喧嘩買ってやる。首都高が閉鎖されるほど雪降らしやるよチクショー!』





ホワイトクリスマス?良いぜ、許可する。ただし首都高が閉鎖されるだけ降りやがれ!!調子に乗った恋人達に絶望を!!!


(ガチで降らせたよ…)
「準太…、今の部活方針の所聞いてたか?」
「あ?聞いてねえよ」
「堂々と答えんなよ…だから、」
(ロマンチックも糞もねえけど、クリスマスの日に毅彦と一緒だから良いか)





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ロンリ―祐史と男らしいけど乙女思考なエース、ときどき鈍感四番



09,01,02


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