text

□event
3ページ/10ページ





、部活に行く前に両親に止められ、明日あんたはどうする?と聞かれた。

どうするも何も25日から冬休みなのだから家で適当に……、あーそういえば今日はイヴだったか?
今思い出しました、と言う顔で目の前に居た両親に視線を向けると、心底呆れたような驚いたような何とも複雑な顔をしていた。
通りすがった姉には、哀れみに近い視線を向けられた。



恋人がサンタクロース? 聖なる夜に白ひげ親父に扮装した恋人見て、よく感動できるね。



「やっほー」



家のドアを開けたが思わず閉めてしまった。何故かって?何故って…、間違っても部活の先輩であろう人がサンタコスプレで来られたら閉めざる負えないと思う。
自宅から、ここまでの道なりをサンタコスで自転車に跨り来てしまった山ノ井先輩の度胸も凄いが、そのサンタコスが女性用のミニスカって…。
寒いし、痛いし、どうしろと?ツッコめと?俺はそんな芸人魂は持ち合わせていないぞ?



「ちょっと〜寒いんだから入れてよー」
「本当に先輩ですか?」



ドアをほんの少しだけ開けて問うと、サンタコスでオレオレ詐欺なんてする人なんて居ませんーぷんぷんと頬を膨らましている紛れもない先輩が居た。
いやいやいや…むしろサンタコスでオレオレ詐欺してくれる他人の方がましだったと心中ツッコんだ。

今日の朝、家を出る前に言われたデートしに出掛けると言って居ない両親に、彼氏とクリスマス会と言ってニ、三日家を空ける姉、町内の人たちと忘年会で飲みに行ってしまった祖母。
自分は特に部活以外で用事も無かったので、部活後家に準太でも呼んでこれからの野球部について話し合いでもするかと思っていた矢先に降り出した雪によって中止になった部活。

どうするかと思っていた所で鳴ったインターホンで玄関へ行ってみたらまさかの先輩。しかも、女サンタ。冗談や夢なら今すぐ止めて欲しいと思っていたが、無情にも現実であった。



(家に誰も居なくて良かった…)
「毅彦は〜ん、うちをいれてくれへんのー?いけずな、」
「大声な上に裏声で呼ぶの止めてくれませんか?!!」
「なら、最初からさっさと開けんかいボケエ」
(今度はドスの効いた低音ヴォイスですか…)


甘ったるい猫なで声で呼んだかと思ったらの、極道のような巻き舌口調は胃に悪い。
いくら実家が京都だとしても、ここぞとばかりに京弁を使われると肝も冷える。それを分かったうえで使うのだから質が悪い。



「あれ、家族居ないのー?」
「みんな外出中ですよ」



本当に今こそ神に感謝したことは無い。先輩にこんな格好をさせて家に来させたと家族が誤解したもんなら、変な性癖でも持っているのかもしれないと心配されかねない。
目の前で家を物色している先輩を見て溜息しか出てこない。

…しかし、なぜ俺の家に?疑問ばかりが頭を埋め尽くす。
クリスマスの日に特に恋人でも無いものが一つ屋根の下で二人っきりと言う状況が可笑しいではないか、いやむしろ男同士が付き合うこと自体可笑しいしな。と自分自身の思考に苦笑い。



「そろそろかな」
「はい?…って、」



一体何事だ、と突然の後頭部への激痛に顔を歪めると目の前には山ノ井先輩の顔のドアップが視界いっぱいにあった。
え、ちょ、どういう状況ですか、と混乱する頭を整えようとしようとした瞬間。





「毅彦ー!勝手におじゃまし…、」
「じゅっ、準太」


「サンタクロースプレーってマニアック過ぎるだろーがバッキャロオオオオオオ!!」



後ろに引かれた右足が綺麗な曲線を描いて俺の左頬にクリティカルヒットした。



「よーし、次は彼女が家に来ていると言う慎吾さん宅に行きますかー」



先ほどまで俺の上に乗っていた先輩は、何事もなかったかのように立ち上がると玄関へと向かった。





‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
圭輔くんに構ってくれないとお仕置きしちゃうぞ。



09,01,02


次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ