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□event
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 合と松永から予想外の裏切りを受けた本山と山ノ井は、その後の部活では何かに憑依されたかのように打ち込んでいた。そんな必死に打ち込む2人の姿に感心した監督がお前らもあれくらい出来るだろ、と言わんばかりにシートノックでは難しい所に捕りに走らせ、バッティング練習では打ったら一塁まで全力疾走で駆け抜けろと根性論を今から説きそうな勢いの監督に、為す総べなく振り回される部員たちに死相が浮かんできたころに部活終了時間となった。
普段の倍は厳しかっただろう、とグランド整備のため倉庫からブラシを引き摺り出しながら途切れそうな意識を寸でのところで抑えている島崎の臀部(でんぶ)に衝撃が起きた。
「……っ!!?いってえな畜生ーなんだよお前ら。」
「イエーイ、元気無いですね〜慎吾君!チョコいっぱい貰ったのにまだ足りないってかーぎゃはは」
「山ちゃんナイスキックー!チョコ貰うような奴には天誅じゃーへへっ」
(うわー…軽くナチュラルハイになってるじゃん。)
尻を擦りながら目の前でヒーローのようにポーズを決めている2人に憐みの目を向けていると、2人の後ろから真柴がひょっこりと顔を出した。島崎は、今のこいつ等に絡まれたら厄介だと思い視線で来るなと訴えるが、下がった眉をさらに下げて困ったようにしていたが、意を決したように声を掛けた。
「や、山さん!…あの、これ。クラスの女の子から渡してって頼まれちゃって。」
「俺になに?はっ、…こ、これはもしや神聖なるチョコレートではあーりませんか?!!」
「なにー!?ちょ、迅ちゃん俺には無いわけ?山ちゃんにあって俺には?!!」



諸君賢く在れ 見知らぬ後輩から頂戴したチョコと愛を胸に笑う




「あちゃー…ヤバいよ迅ちゃん。野球部で貰ってないのって多分本やんだけだぞ?」
「え!…じゃ、じゃあ今渡したら完全アウト、でしたよね?」
リボンで結ばれたチョコを高く掲げ、くるくる回る山ノ井のすぐ横では四つん這いで静かにショックを受ける本山の姿があった。





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帰宅後、祐史はお母さんからのチョコに大喜び



09,02,18


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