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ずっと一緒に居たのに、今更気が付いたこと。"ずっと"と言うのは、オレの中では"野球の中"だけだと分かった時初めてチクリと胸が痛んだ。

その鈍い痛みが何なのか知らないけど、"野球"以外の準さんを知らない自分の情けなさが分かったそんなある日。



「おらりお、さっさと着替えろ。あとお前だけなんだから」
「う゛ー…」
「んだよ」



部室の真中にあるミーティング用の長机とパイプ椅子に座っている準さんの手元を見て初めて知った事。



「左…だ」
「あ゛? …あ〜。何お前今更?」



くつくつと口を抑えて笑いに堪えてる準さんが気持ち悪い。だって仕方ないじゃん。

まず字書いてる時点で初見だもん。と、口を尖らしてたら堪え切れなくなった準さんは、ぶはっと息を噴出してゲラゲラと笑い出した。



こうなった準さんは、なかなか止まらない。疲れるまで笑わないと止まらないのは、3年前から経験済み。

その後、あー疲れたって涙を拭くのも知ってる。笑い過ぎって言うと、うるせーって背中蹴飛ばされるのも実証済み。格好いいと女の子から言われるエースの格好悪い所をいっぱい知ってる。






知ってる。知ってた。知ってた筈だった。





でも、準さんが鉛筆を持つ手が左だったなんて知らない。だって知らないもん。

俺が知ってる準さんは、右投げ右打ちのサウスポーから程遠い"野球部エース"の高瀬準太しか知らないんだもん。




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