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今から丁度93年前の今日、1915年8月18日に第1回全国中学校優勝大会が行われたらしい。
夏の高校野球も、今年で90回を向え野球の人気をしみじみと感じる中今年の夏は閉幕した。
野球にハマって、甲子園に憧れ、甲子園の地を踏もうと胸焦がれた幼少時代。
白球を追い掛ける面白さを知ったその日から、春夏毎年欠かさず高校野球を見て来た。
が、決勝でこんなボロ勝ちする試合を見るのは珍しい。
春の決勝もだが、決勝らしくないと言ったら失礼だが観客としてはシラける。
そんなことを言いに、暑い中自転車を漕いで向かった先は、つい一ヶ月前までチームメイトとして一緒に汗水垂らしてキツい練習を耐え抜いて来た仲間の1人、和己の家。
残り僅かな夏休みを、何処か遊びに誘いに行くでも無く向かった。
「よっ。」
突然の俺の訪問に、鳩が豆鉄砲くらったみたいな顔で玄関の扉を開けた和己。
そのまま勝手にお邪魔しまーす、と居間に居るであろう和己の親に挨拶し、部屋へと上がると慌てて俺の後を追い掛けて来た和己は、いきなりなんだと驚きと心配が入り交じった顔で聞いてきた。
「んー…、大した用事じゃないんだけどさ〜。…決勝、」
「観たぞ。零点ゲームだったな。」
「そっ。」
返事を返した俺は、ベッドを背に床に座った。
和己は、何をするでも無くドアの前に立ったまま俺を見下ろしていた。
俺は、天井を仰ぎ見たまま独り言の様に言葉を紡いだ。
「決勝ってさ、コールドが無い分点差が開くとすげー公開処刑の気分になるよな。今年の日本一が決まる試合だから、観客席が満席に埋まって、座れない人は立見したり、階段に座ってマウンドに注目してるのに勝ってる学校のアルプス以外からは、溜息に野次、挙句に帰って行く人も居るんだ。ああ、もうこれは決まったなって雰囲気が球場を覆うんだ。その後の負けたチームへの風当りは最悪だよな。同じ学校の奴なんて態度がよそよそしいし。気使い過ぎなんだよ。逆にこっちが気利かせて、空元気にふざけなきゃいけないんだからな。困るよ。本当、」
本当に困るよ。何で今頃涙流さなきゃいけないんだよ。あの決勝の球児たちの姿見て、自分と重ねるなんて馬鹿馬鹿しい。ふざけてる。ふざけてる。
でも、和己も唇を血が出る程噛み締めてた。
本当にふざけてる。
ふざけた世界に取り残された俺達は、どちらが馬鹿だ。
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